第37章 昨日之境⑥深淵夜話

紅蓮華冕昨日之境⑥深淵夜話

深淵夜話

……鬼域深淵、竜巣城の片側にある森の近く

——鬼域深淵,龍巢城一側的樹林附近

【煉獄茨木童子】

「友よ、石橋は砕け、阿修羅と帝釈天は下に落ちてしまった。恐らく先行きは暗いだろう!」

摯友,石橋已經碎裂,阿修羅和帝釋天就這麽掉了下去,恐怕兇多吉少!

【鬼王酒呑童子】

「何を怖がってる、あの二人は決して只者ではないと言ったはずだ。そうあっけなく死なれては、この俺の面子が潰れるじゃねえか。無事に橋を渡った者は何人いる?」

怕什麽,我說過那兩人絕不是等閑之輩。如果他們就這麽死了,豈不是本大爺砸了自己招牌。順利過橋的有多少人?

【翼団兵士甲】

「最初は半數近くおりましたが。あの不気味な神器が現れるや否や、皆の霊神體が制禦できなくなり、消えてしまいました。狀況が逆転し、我々は多くの兵士を失いました……今は、二割しか生き殘っておりません。」

本來有近一半的人。但是那個詭異的神器一出現,所有人的靈神體都不受控制地消失不見。局勢逆轉後,我們折損了許多兵力……如今,只剩下兩成了。

【鬼王酒呑童子】

「正面から城門を突破するのは不可能になったようだな。十天衆の援軍は、端から來るつもりが無かったのだろう。全員俺について來い。崖付近の森に潛入し、人目につかない場所で駐屯する。そこのお前、軽傷で済んだ信頼できる部下を數名集め、當番制で崖を見張るよう命じろ。よじ登る気力が殘っている者を見つけたら、拠點に連れて帰り治療を施せ。軍の中に醫者はいるか?」

原本正面攻城門的法子是行不通了。十天衆的援軍,肯定是一開始就沒打算來。所有人先跟着我潛伏去懸崖近處的樹林裏,找個隐蔽的地方紮營。你,找幾個信得過又傷得不重的下屬,輪番去懸崖邊上巡視。看看有沒有人能爬上來的,帶回營地來救治。随軍的人還有軍醫嗎?

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【毘瑠璃】

「怪我人の治療なら、私が!」

我可以救治傷員!

【煉獄茨木童子】

「毘瑠璃?なぜお前がここに!」

毗琉璃?你怎麽會在這裏!

【毘瑠璃】

「歩兵の衣裝を盜み、皆が琉璃城を出た時、こっそり後ろをついてきた。橋を渡る時も、歩兵の中に隠れていた。」

我偷了步兵的衣裝,在你們離開琉璃城時偷偷跟在了隊伍的後面。過橋時混在步兵之中。

【煉獄茨木童子】

「まったく……以前琉璃城を離れたせいで、城が陥落し、鬼族に占領された事を忘れたのか!」

你簡直是……你忘了之前貿然離開琉璃城,導致全城失守落入鬼族手中的事了嗎!

【毘瑠璃】

「もちろん忘れてなんかいない、でも今回は事情が違う。當時の鬼族には、琉璃城の付近に伏兵を配置する餘力があった。しかし今は痛手を負って戻って來た。主力は全て、あなた方を迎え撃つために、ここに集っている。出兵するとしても、我々と同じ道で遭遇するでしょう。琉璃城は竜巣城に最も近い天人の都。竜巣城を討伐しなければ、琉璃城に平和な日々は一日たりとも訪れない。ましてや私の姉の蘇摩は、迦樓羅に攫われてしまった。彼女は琉璃城になくてはならない存在であり、私も彼女無しでは生きていけない!」

當然沒有,然而此一時彼一時。那時的鬼族有餘力在琉璃城附近布下伏兵。現在元氣大傷班師回朝,主力都在這裏迎戰你們。就算要出兵,也會和我們在同一條路上撞見。琉璃城是離龍巢城最近的天人城市,龍巢城一日不除,琉璃城就不能安寧。更何況迦樓羅擄走了我的姐姐蘇摩。琉璃城不能沒有她,我也不能沒有她!

【鬼王酒呑童子】

「なんとも感動的な姉妹の絆だな。ここまで來たなら、軍醫と怪我人の救助をしろ。ついでに、我々の代わりに拠點を見張っていてくれ。」

這姐妹情倒是感人至深,既然來都來了,你就跟着軍醫下去救治傷員。順便替我們看着這營地。

【毘瑠璃】

「あなた達はどこへ行くの?」

你們是要去哪裏?

【鬼王酒呑童子】

「俺と茨木童子は一日中ここで退屈していたんだ。気晴らしにこの辺りを散策し、竜巣城の下で月でも眺めるつもりだ。茨木童子!來い!この森は窮屈過ぎる、竜巣城の夜景を見たいと言っていたじゃねえか。」

本大爺和茨木童子悶了一天了,剛好出去轉轉,看看這龍巢城下的月色。茨木童子!過來!你不是說林子裏太無聊,要去看看這龍巢城的夜景?

【煉獄茨木童子】

「何?う、うむ、友の言う通りだ!今すぐ夜景を見に行こうではないか!」

啊?呃、嗯,摯友說的沒錯!我們這就去看看夜景!

【毘瑠璃】

「二人とも……おかしな人達。」

這兩個人……真是怪人。

……鬼域深淵、入口付近

——鬼域深淵,入口附近

【鬼王酒呑童子】

「ここだ。霊力は東から西へと流れて來て、ここで合流し、最後に深淵の中に入っていく。だが、俺が深淵の中から感じた圧迫感は消えている。膨大な量の霊力が吸い込まれている。こんな無限の霊力、たとえ大妖怪だとしても耐え難いだろう。竜巣城は確かに深淵の入口の真上に建築されている、迦樓羅の実力も侮れん。だが彼はどうも全てを知っている様には見えない。今日橋を渡った時、彼は金翅鳥に天人の兵士を深淵の中に蹴落とすように命じた。そして、阿修羅のせいで、自分が深淵に落ちる一歩手前まで追い詰められると、慌てて切り劄の神器を使った。深淵の中には霊力が集っている、恐らく落ちても死にはしない。もしそれを知っていれば、追手を送らないはずはないだろう?」

就是這裏了。靈力從東往西流動,一路到達這裏,彙聚在這一帶,最後下沉進入深淵之中。但之前本大爺感受到的來自深淵中的壓迫氣息倒是不見了。被吸食的靈力如此巨量,即使是大妖也承受不了這樣源源不斷的靈力流動。龍巢城确實建在這深淵入口之上不錯,那迦樓羅也有不錯的實力。但是怎麽看他都不像是知情的樣子。今日過橋時,他號令金翅烏将天人士兵踢入這深淵。又因阿修羅險些使他墜入深淵,情急之下拿出了殺手锏神器。這深淵中靈力彙聚,掉下去恐怕也不會死。如果他知道這一點,又怎麽會不派追兵?

【煉獄茨木童子】

「そういえば、我々がこの竜巣城に接近した時、二度も突然出現した霧に遭遇し、道に迷ってしまった。あれは迦樓羅が仕掛けた結界だと思っていたが、今日大軍が橋を渡った時、霧は出現しなかった。どうやら迦樓羅とは関係ないようだ。深淵の件の黒幕は恐らく他にいる……友はそれに気づいて、橋の上で二人に手出しせず、突然立ち止まったという訳か?」

這麽說來,我們兩次接近這龍巢城,都遇見了突然出現的大霧,迷失在其中。我原以為是這迦樓羅設的結界,然而今天大軍過橋,這大霧卻并沒有出現。似乎和迦樓羅并無關聯。這深淵之事的罪魁禍首,恐怕另有其人……摯友你是察覺到這一點,才會在橋上對他們二人袖手旁觀嗎?

【鬼王酒呑童子】

「ああ、そうだ。」

正是。

【翼団兵士甲】

「お二方、やはりお二方の予想通り、闇に隠れて深淵からよじ登って來た仲間を沢山見つけました。間一髪で阿修羅様が鉄網を広げ、彼らの命を救ってくれたそうです。ですが阿修羅様は帝釈天様を救う為に、共に谷底へと落ちていきました。」

兩位大人,果然如二位所料,我們在深淵邊沿找到了許多趁夜色爬上來的同伴。他們說是危急之時阿修羅大人張開鐵網救了他們一命。然而阿修羅大人為了救帝釋天大人,最終二人還是跌落了谷底。

【鬼王酒呑童子】

「何を慌てている?少し待てば、二人とも自力で上がってくるかもしれない。俺と茨木童子は先に帰る。他に何かあるなら、二人が上がってきてからにしろ。」

急什麽?再等些時候,他們兩個興許自己就上來了。我和茨木童子先回去了,還有什麽事,等他們上來了再說。

【煉獄茨木童子】

「友よ、わざと天人を避ける理由は、まさか……」

摯友,你故意避開了那些天人,難道說……

【鬼王酒呑童子】

「天人相手にも油斷は禁物だ、言っただろう?阿修羅と帝釈天は只者じゃねえ、この酒呑童子が自分の面子を潰すことは決してない。」

對着這些天人也不要放松警惕,本大爺不是說了嗎?阿修羅和帝釋天不是等閑之輩,我酒吞童子是不會自砸招牌的。

……深淵の底

——深淵地底

【阿修羅】

「いや。帝釈天、俺は行かない。晝間お前は俺を助けた、俺もお前を見殺しにはしない。」

不。帝釋天,我可不會走。白天你救了我,我也不會見死不救。

【帝釈天】

「私のようなお荷物を抱えて、どうやって上に登り、兵士達と再會するつもりだ?」

帶着我這種累贅,你如何爬上去,和将士們團聚?

【阿修羅】

「生き殘った兵士達に上で待つよう伝えた。お前を置いて俺一人で戻るなど、空約束にも程がある。」

我已經讓存活的将士們在上面等我們。到時候只有我一個上去了你卻不在,豈不是我食言了?

【帝釈天】

「あなたに何を言っても無駄だ。今すぐ私がこの場を去る……これから私が魔神に食われようと、餓死しようと、あなたとは無関係だ!」

多說無益,我這就走……之後我無論是被魔神吃掉,還是餓死,都與你無關!

【阿修羅】

「確かに何を言っても無駄だな。お前はあんな物を飲んで、馬鹿げたことを口走っている。これ以上は一言たりとも聞いてやらん。」

多說确實無益。你現在吃了那東西,滿口胡話,你再多說一個字,我也不會聽。

阿修羅は深淵から拾ってきた鎖を取り出し、有無を言わせず帝釈天をきつく縛った。帝釈天の罵聲にも聞く耳を持たず、彼を自分の背中にくくりつけた。阿修羅は手に持っていた給水袋を帝釈天に押しつけ、彼を背負い、絶壁を這いながら上へ登っていく。

阿修羅拿出一條深淵裏撿來的鎖鏈,不由分說把帝釋天捆了個結實。不顧帝釋天的咒罵,把他綁在了背上。他把手中的水袋塞給帝釋天,背着他順着峭壁開始往上爬。

【阿修羅】

「罵聲は聞き飽きた、こんな高い崖、登るのにどれだけ時間がかかるかわからない。もう登り始めたんだ、落ちれば今度こそ共倒れになるぞ。少しはまともに話してくれないか?」

你別罵了行不行,這懸崖這麽高,我爬上去都不知道要到什麽時候。上都上來了,再掉下去就真是一起死了。你就不能好好和我說說話?

【帝釈天】

「ふう…………全くもって人の話を聞かないやつだ。共に地獄へ落ちる?望むところだ。」

呼————你這家夥如此不聽人話,我恨不得現在跟你同歸于盡。

【阿修羅】

「随分と手のひら返しが早いな。晝間橋の上で、俺に縋りついて失望することなどないと言ったばかりだというのに。」

你變臉可真快,今天上午在橋上,還抓着我說永遠不會對我失望。

【帝釈天】

「失望なら今正にしている。」

我現在就十分失望。

【阿修羅】

「なるほど、どうりで俺にお前の何が分かるなどと言ったわけだ。失望するか否かの基準が確かに獨特だ。」

原來如此,難怪你說我對你不夠了解。你對人失望的标準确實獨特。

【帝釈天】

「阿修羅!冗談を言っている場合か!」

阿修羅!這不是開玩笑的時候!

【阿修羅】

「冗談を言っているつもりはないが。俺は本気でお前を理解しようと、お前をよく知りたいと心から思っている。だが俺はお前ほど察しが良くない。故に、お前に教えて欲しいが、そんなお前は口を固く閉じる。ならば極端な行動を取り、お前を怒らせることで試す他に術はない。つまり、お前が今怒っているのは全てお前自身のせいだ。俺に教えてくれなかった自分を責めるんだな。」

我沒有和你開玩笑。我是貨真價實地在試圖理解你,想了解你。我沒有你那麽缜密的心思,想要你直接告訴我,你又不肯說。我只能做些極端的事情,來試探你。所以你現在心急生氣,說到底還應該怪你自己身上,誰讓你不肯告訴我?

【帝釈天】

「……」

【阿修羅】

「お前の能力が欲しい。そうすれば、簡単に人の考えを知ることができる。」

真想要和你一樣的能力,能夠輕易就看透人心。

【帝釈天】

「……阿修羅、私は自分の能力が好きではない。」

……阿修羅,我并不喜歡自己的能力。

【阿修羅】

「それは何故だ?」

這又是為什麽?

【帝釈天】

「戦が絶えず、戦士も民も酷く苦しんだ。私はその苦しみを分かち合う軍醫だった。」

戰争連年不休,從戰士到平民都苦不堪言,我是緩解大家痛苦的軍醫。

【阿修羅】

「人の心を落ち着かせるお前の能力、その本質は他人の苦しみを吸収し、その身をもって擔うものだということは知っている。」

我知道你安撫人心的能力,本質是承擔和吸收他人的痛苦。

【帝釈天】

「そうだ。人々の苦しみは私の精神へと流れ込む。どこへ行こうがこの苦しみからは逃れられない。一人で耐え続けるしかなかった。しかし積年の苦しみは、私の精神を崩壊寸前まで追い込んだ。軟弱だろう?私が受けた苦しみは、帰る場所や最愛の人を失った人々が感じた苦しみの千萬分の一にも及ばないというのに。それなのに、私には耐えられないとほざくなんて。こうして悩み続けるよりも、前線で戦えば、少しでも力になることができたし、死に場所も得られた。しかし、後方で兵士を支援する他に能がない私では、戦死することすら高望みだった。」

沒錯,衆人的痛楚都會流入我的精神裏,走到哪裏都逃不掉這些苦楚。我只能自己忍下,但積年累月的痛苦幾乎将我逼瘋。很懦弱是不是?我所體會到的,不及那些流離失所,痛失所愛之人的千萬分之一。卻膽敢說自己難以承受。與其這樣患得患失,不如去前線戰鬥,至少能夠出一份力,死也能死得其所。然而對只能在後方支援士兵的我,連戰死都是不可企及的命運。

【阿修羅】

「確かにお前の能力は実戦向きではないが。お前の知恵、お前の優しさ、お前の思いやりは、全て前線では貴重な才能だ。」

你的能力雖然不能勝任實戰。然而你的智謀,你的溫柔,你的同理心,都是前線不可多得的才能。

【帝釈天】

「かつて、私に同じ言葉をかけてくれた人がいた。」

曾經,也有人對我說過一樣的話。

……數十年前、竜巣深淵前の天人の要塞

——數十年前,龍巢深淵前的天人要塞

【要塞の戦士乙】

「何故そう仰るのですか?軍醫様ご自身は戦場に行かなくても、私のような者が再び戦場に戻れるのは、全てあなたのお陰です!」

您又何必這麽說?軍醫您雖然不上戰場,但是像我這樣的人能重返戰場,都是靠您的幫忙呀!

【要塞の戦士甲】

「そうですよ、帝釈天様が前線で戦うことはなくても、先日捉えた口を閉ざした捕虜を思い出してください。我々がどんなに苦労したことか。最後には帝釈天様が情報を引き出してくれました。」

可不是嗎,帝釋天大人雖然不是前線的人,但是前幾日抓來的俘虜死活不肯開口。讓我們吃了多少苦頭,最後還是帝釋天大人弄到的情報。

【要塞の戦士乙】

「帝釈天様は貴族ですが、全く威張らず、とても寛大で、何をされても決して怒りません。気に障るとすぐ杖刑を持ち出し、大聲で怒鳴る将軍様とは比べ物になりません!」

帝釋天大人雖然是貴族,卻一點架子也沒有,脾氣也好,怎麽欺負都不生氣。比将軍那個一言不合就上軍棍的破鑼嗓子可愛多了!

【帝釈天】

「……最後のは本當に褒めているのか?」

……最後那個真的是優點嗎?

【要塞の戦士乙】

「勿論です!賛美に値し、今後も保つべき素晴らしい長所です!」

當然是優點了!是要發揚,要保持的大優點!

【帝釈天】

「分かった分かった、将軍のようにはならないと誓う。」

好好好,我答應不會輕易變成将軍那樣。

【要塞の戦士乙】

「それならよかったです!」

那就好!

【要塞の戦士甲】

「では帝釈天様、我々は先を急ぎます!」

帝釋天大人,那我們先走了!

【帝釈天】

「ああ、分かった。ずっと変わらず保て、か……決して容易い事ではない。食糧と弾薬が不足し、戦士達は既に満身創痍、援軍はいつまで経っても來ない。私とて、戦士達の痛みを分かち合い、彼らを激勵し、共に苦難を乗り越えたいのは山々だが。皆、心の中では知っている。援軍は恐らく、永遠に來ない。私には聞こえる、見える。皆、無理に笑顔を作っている。皆、本當は知っている。十天衆が新たな兵士を派遣するのは、私達が竜巣城の下で戦死し全滅する時だと。もう聞くことをやめてしまえたらいいのに。何故私は皆と同じように自分を騙し、噓と戯言で自分を麻痺できないんだ。そうすれば少なくとも、殘された日々を楽に過ごす事が出來たというのに。忉利天よ、どうか私からこの憎き能力を取り上げてくれ……私が最期に欲しいのは、皆と同じ、ひと時の安らぎに過ぎない。」

嗯,好。不要改變,一直這樣下去嗎……談何容易。這裏缺糧短藥,戰士們早已傷痕累累,說好的援軍卻遲遲不來。我又何嘗不希望分擔戰士們的傷痛,開導勸慰他們,幫助大家渡過難關。然而,大家心裏都明白,援軍,怕是永遠都不會來了。我能夠聽到,能夠看到,其實大家不過是強顏歡笑。真相已經浮現在了每個人的心中。想要十天衆派來新的士兵,除非我們全軍覆滅,戰死在龍巢城下。我多想不必再聽下去啊。為什麽我不能像大家一樣自欺欺人,用謊言和笑話麻痹自己。這樣至少,還能夠輕松地度過剩下的日子。忉利天啊,我祈求你收回我這可恨的能力吧……我想要的和大家一樣,不過是最後片刻的寧靜。

……數日後

——數日後

【要塞の将校】

「どけ、早くどけ!」

讓開,快讓開!

【帝釈天】

「何が起きた?」

發生了什麽?

【要塞の戦士乙】

「あの憎き金翅鳥です、やつらは夜中門番に奇襲をかけ、食糧を奪っていきました!今朝発覚した時には、既に大半の食糧を奪われ、門番たちの屍はもう硬直していました。彼らの心魂は無殘に裂かれ、喉には爪で引き裂かれた痕跡があります。」

是那群該死的金翅烏,他們夜裏伏擊了守衛,還搶了糧草!早上發現的時候糧草丢失了大半,守衛幾個屍體都僵硬了。他們心魂破裂,還被用爪子扯斷了喉嚨。

【要塞の将校】

「邪魔だ!」

別擋路!

【帝釈天】

「将軍様!どういうことですか?ここは本物の治療場ではないのです、彼の傷は到底治せません!」

将軍!您這是什麽意思?我這裏不是真的軍醫處,治不好他的傷!

【要塞の将校】

「彼はもう助からん、一晩中持ち堪えたが、まともに息ができない。喉が完全に切れていない、これでは息をするのも苦痛だ。彼を楽にしてやれ。幼い頃からこんな場所に送り込まれたんだ。これで彼はようやく解放される。」

他已經救不過來了,撐了一晚上進氣多出氣少。喉管沒斷幹淨,多喘一口氣都只是苦痛。你幫他一把吧,他還是個孩子的時候就被送來這鬼地方,現在終于能離開了。

【帝釈天】

「そんな……いえ、私は人を殺めた事はありません!ましてや自分の戦友を!」

您是說……不,我沒殺過人!更何況是自己的戰友!

【要塞の将校】

「他人の苦しみを和らげることができるのだろう?これがお前の仕事だ。口を閉じて、刀を取れ!これは命令だ!」

你不是能減輕他人的痛苦嗎?這就是你的工作,閉上嘴,拿好刀!這是命令!

【帝釈天】

「私は、私には分からない……」

我、我不知道……

【要塞の戦士乙】

「これは彼の最期の願いです。」

這是他的遺願。

【帝釈天】

「何?」

什麽?

【要塞の戦士乙】

「かつて彼と前線で、最期の死に方について話したことがあります。こいつは、あなたの元で死にたいと言っていました。彼は辺境で最も地位の低い民。その上、身寄りのない孤児でした。人に良くしてもらったのは、これが生まれて初めてだと。彼は、あなたの側でなら、ひと時の安らぎを得ることができると言っていました。もし死ぬなら、あなたの側で死にたいと。」

過去我們在前線一起聊過,如果一定要死,想要怎麽死。這小子說過,想死在您這裏。他是邊境最低賤的平民,又是孤兒,一輩子沒有被人這麽善待過。他說過,只有在您這裏,才能得到片刻的安寧。如果一定要死,他想要死在您的身邊。

【要塞の戦士甲】

「どう……か……」

求……你……

【帝釈天】

「分かった、分かったから、もう何も言うな、言う通りにする!」

好,好我知道了,你不要再說話,我答應!

【要塞の戦士乙】

「ここです、刀をここへ刺し込めば、もう痛みを感じません。」

這裏,只要将刀送進這裏,就不會再疼。

【帝釈天】

「怖がらないでくれ、すぐに痛みは無くなる。私が代わりに痛みを受ける。私が……私があなたの恐怖を取り除こう。」

別怕,馬上就不疼了,讓我來替你承擔,讓我來替你……讓我來帶走你的恐懼。

【要塞の戦士甲】

「ありが、とう……」

謝、謝……

戦士が息を引き取った後、その場にいた者は皆沈黙した。

戰士死後,在場的幾人都陷入了沉默。

【要塞の将校】

「食糧の件について調査する、先に席を外すぞ。帝釈天、彼の亡骸を片付ける者は後ほど手配する。」

我還有糧草的事需要調查,先告辭了。帝釋天,他的屍體一會兒有人來打理。

【帝釈天】

「……彼は死んでしまった。數日前まで、ここで私達と談笑していたというのに。彼の死に際の恐怖、苦しみ、私は全て……あ……ぐあ……!」

……他就這樣死去了,分明幾天前還在這裏和我們談笑。他死時的恐懼、痛苦,我全部都……啊……嗚啊……!

【要塞の戦士乙】

「帝釈天様、大丈夫ですか!あなたもきっとお辛いでしょう。當然だ、たとえ死を覚悟した者でも、死に際には悔しさを感じるはず。私のせいです、私が将軍様に進言しなければ……」

帝釋天大人,您沒事吧!您一定也很痛苦。也是,無論是多安然赴死的人,死時肯定也是不甘心的。是我的錯,我不該勸說将軍他……

【帝釈天】

「あなたのせいではない。」

不是你的錯。

【要塞の戦士乙】

「そうだ、どうしてもお辛ければ、これをお飲みください!」

對了,如果您實在難受,就吃些這個吧!

【帝釈天】

「これは?」

這是?

【要塞の戦士乙】

「これは玉醸と言って、薬酒の一種です。服用するとすぐに痛みが消え、戦場でも恐怖を感じなくなります!私達は毎日飲んでいますが、くれぐれも将軍様には秘密にしてください。あの方はこれが気に入らないようなので。」

這是玉釀,是一種藥酒。服下後馬上就不會痛了,還能使人在戰場上無所畏懼!我們幾個每天都在用,不過你不要告訴将軍,他不喜歡這種東西。

【帝釈天】

「ありがとう!ごくん……ほんの一口飲んだだけで大分楽になった。さっき死を目前にした時の苦しみは全て消え去り、頭の中で鳴る聲も弱まった。これは良いな。まだあるか?」

謝謝你!咕嚕——只是小啜一口馬上就舒适了許多。方才觸碰到瀕死時的痛苦煙消雲散,腦海中的嗡鳴也減弱了。這可真是個好東西。你那還有嗎?

【要塞の戦士乙】

「もちろんです!将軍様に知られないように、秘密にしておいてくださいね!」

當然!只要您幫我們保密,別告訴将軍就行!

【帝釈天】

「秘密は守る、私が代わりに保管しよう。将軍の監視の目は、私のところまでは屆かない。」

我這裏将軍不查,我幫你們看着。

要塞の兵士たちのすすめで、帝釈天は毎日のように玉醸に頼るようになった。そして、ある朝。帝釈天はやっと玉醸の夢から覚めた。

在要塞中戰士們的推薦下,帝釋天每天啜飲玉釀。直到有一天早上,帝釋天從玉釀的美夢中清醒過來。

【帝釈天】

「ふう…………予想外に辺りが靜まり返っている、一體何があった?苦しみも泣き聲も消え去った、戦士達は悲しみから解放されたのか?食糧の問題が解決したのか?十天衆の援軍が遂にやって來たのか?将軍様!将軍様!援軍が、援軍が遂に來たのですか?」

呼…………世界出乎意料的安靜,這是怎麽了?所有的苦痛和哭號似乎都離我而去了,是戰士們不再難過了嗎?是糧草的問題解決了嗎?是十天衆的援軍終于來了嗎?将軍!将軍!是援軍,援軍終于來了嗎?

【要塞の将校】

「援軍?帝釈天、久し振りに會ったかと思えば、気が狂ったのか?最寄りの町に食糧をもらいに行くところだ、邪魔をするな。それ以上無駄口を叩くと、兵士達の心を亂した罰として、杖刑を下す。」

援軍?帝釋天,許久不見你,你這是瘋了嗎?我還要去最近的城莊借糧草,你就不要添亂了。再說下去,我就按擾亂軍心處置,讓人打你軍棍。

【帝釈天】

「どういうことです?援軍が來た訳ではないのですか?そんな、まさか……戦士達の苦しみが消えたのではなく、私に彼らの心の聲が屆かなくなったのか?私の霊神體が、私の能力が消えた……何故だ?最も憎んだ能力を完全に失ったというのに、心は欠片も釈然としない。それどころか、後悔の波に押し潰されそうだ!遂に、唯一の価値まで失ってしまった!玉醸だ、この後悔を打ち消せるのは、玉醸しか……まだ玉醸はあるか?」

怎麽回事?不是援軍來了?等等,難道說……不是戰士們的痛苦消失了,是我聽不到他們的聲音了?是我的靈神體,是我的能力消失了……為什麽?我徹底失去了我最憎恨的能力,然而心中卻絲毫沒有釋然,而是翻江倒海的後悔!這樣一來,我豈不是連最後的用途,都煙消雲散了!而能消除這後悔的,只有……你這裏還有玉釀嗎?

【要塞の戦士乙】

「帝釈天様?」

帝釋天大人?

【帝釈天】

「頼むから玉醸をくれ……私はもう霊神體を召喚できない……私の苦しみを和らげることができるのは、玉醸だけだ!」

拜托你了,我已經無法召喚靈神體了……玉釀能緩解我的痛苦!

【要塞の戦士乙】

「何故そんな風になってしまったのですか?今宵の夜勤は私どもが當番です。もし金翅鳥と遭遇し、手も足も出なければ、軍は全滅してしまいます!」

您怎麽變成這樣子了?今夜是我們值夜,如果遇到金翅烏毫無反擊之力,是必死無疑了!

【帝釈天】

「だが私は苦しくて堪らないんだ……このまま苦しみながら死ぬのはいやだ。」

可是我好痛苦……我不想這樣痛苦着死去。

【要塞の戦士乙】

「それなら、ここに少し玉醸が殘っております。帝釈天様がお望みなら、どうぞ。ですが……」

那,我這裏還有一點。您想要的話就拿去吧,但……

【要塞の将校】

「玉醸?この數日間、私の目を盜み、裏でこんなものを使っていたとはな!帝釈天様を檻に閉じ込めろ!看守をつけ、誰も中へ入れるな!この部屋にある物は一つ殘らず叩き潰せ!」

原來你們這些日子背着我,竟然是在偷偷喝玉釀!把帝釋天大人給我關在屋裏,嚴加看守,誰也不許進來!這屋裏的東西,全都給我砸爛,一個也不許剩!

……その夜

——當夜

【要塞の戦士甲】

「金翅鳥だ!金翅鳥が襲ってきたぞ!」

金翅烏!是金翅烏殺過來了!

【要塞の戦士丙】

「将軍様を守れ!食糧を守れ!ぐああああ!」

保護将軍!保護糧草!唔呃啊啊啊!

【要塞の戦士甲】

「死んでしまう、霊神體を召喚できない!」

我要死了,我召喚不出靈神體了!

【帝釈天】

「金翅鳥だ!橋の上から攻めてくる!いつかその日が來るとは知っていたが、いざ目前にすると、私は恐怖で震えた。私はやはり軟弱者だ。いいだろう、私が戦友達を死なせたんだ。金翅鳥の爪に引き裂かれ、己の死で詫びよう!」

金翅烏!他們殺過橋來了!雖然早知道會有這一天,但當這天來臨時,我卻還是如此恐懼。我果然是個軟弱之人。也好,我害了戰友們,就讓我死在金翅烏爪下謝罪!

【要塞の将校】

「こんなところで何をしている?要塞はじきに陥落する、早くあちらへ逃げろ!早く!」

你還在這裏幹什麽?要塞守不住了,快給我往那邊逃!快去!

【帝釈天】

「ですが私は罪人です!私が要塞の皆を死なせたんです!」

可我是罪人!是我害死了要塞的大家!

【要塞の将校】

「罪人?お前が?はははは!覚えておけ!我々を死なせたのは竜巣の金翅鳥と、頭上の十天衆であって、斷じてお前ではない!今すぐここから出て行け!」

罪人?你?哈哈哈哈!記住!害了我們的是龍巢的金翅烏,是頭上的十天衆,但唯獨不是你!現在,給我滾!

【要塞の戦士丙】

「帝釈天様、こちらです!」

帝釋天大人,這邊!

【要塞の戦士乙】

「帝釈天様!最後の食糧と裝備を用意しました、急いでください!我々があなたを護衛します!」

帝釋天大人!我們已經集結了最後一點糧草和裝備,快!我們護送您逃出去!

【要塞の将校】

「迦樓羅!この程度の人數で私を仕留められると思っているのか!たとえ私が死んだとしても、彼らには決して手を出させんぞ!ぐあああ!」

迦樓羅!你以為這點人就能震懾到我嗎!我今天就是死,也不會讓你追上他們!呃啊啊啊!

【帝釈天】

「将軍様!!」

将軍!!

【要塞の戦士丙】

「帝釈天様、ご安心ください。この馬車はあなたのためにご用意したものです。夜明け前までに琉璃城に着くことができるはずです、そうすればもう心配いりません!」

帝釋天大人放心,這馬車是專門為您備下的。不到清晨,我們一定趕到琉璃城,到那裏就安全了!

【帝釈天】

「なぜ私を助ける?私は役立たずの貴族でしかない、ここで死んだ方がましだ!」

為什麽要救我?我不過是個無用的貴族,還不如死在這裏!

【要塞の戦士乙】

「今更何を仰りますか!あなたのお力がなければ、我々は今まで生き延びる勇気などありませんでした!」

事到如今您還在說什麽!如果不是您,我們又哪能有勇氣活到現在!

【翠甲鬼】

「どこへ逃げる!迦樓羅様の命令だ、一人たりとも生かしておくわけにはいかぬ!」

哪裏逃!迦樓羅大人說了,一個活口都不能留!

【要塞の戦士丙】

「うわあああ!俺に構うな、早く逃げろ!必ず帝釈天様を安全な場所に送り屆けるんだ!」

唔啊啊啊啊!不要管我,你們快逃!一定要把帝釋天大人送到安全的地方!

【帝釈天】

「だめだ!行くな!彼を見捨てるな!彼は怖がっている、怖がっているんだぞ!」

不!不要走!不要丢下他!他在害怕,在害怕啊!

【要塞の戦士乙】

「心配するな!必ず帝釈天様を琉璃城まで連れて行く!」

你放心!我一定會把帝釋天大人,送到琉璃城!

【帝釈天】

「だめだ!」

不!

帝釈天の語りは終わった。阿修羅は崖を登り続けている。

深淵の底はとうに見えなくなり、頭上には益々明るくなった月明かりがさしている。

帝釋天的故事結束了,而阿修羅還在攀爬。

深淵的崖底早就看不見了,而上方是逐漸變得明亮的月光。

【帝釈天】

「その後、金翅鳥の追手により、彼らは私を護送する道中で次々に死んでいった。私は酷く後悔した。もし私が自堕落の道に走っていなければ、せめて最後の逃亡中には彼らの役に立てただろう。だが、私は彼らが苦しみ死んでいく姿を茫然と見る事しか出來なかった。彼らは命の最期にさえ、ひと時の安らぎも得られなかった。私は逃げることを選んだ軟弱者だという事を、死んだ仲間の一人一人が思い出させる。私の命は、運命に立ち向かう勇気を持つ、真の強者の命と引き換えに拾ったものだ。私には相応しくないことを、私だけが知っている。

那之後,在金翅烏的追擊下,他們一個個葬身在護送我逃亡的路上。我悔不當初,若不是我自甘堕落,在最後的逃亡路上至少還能夠幫到他們。而不是像這樣無能為力地看着他們痛苦死去。哪怕在生命的最後一刻,都無法獲得安寧。每一個死去的同伴,都好像在提醒我只是一個逃避的懦夫。我的性命,是那些真正的強者,那些勇于面對自己命運的人,拿鮮血換來的。只有我自己知道,我根本不值得。

【阿修羅】

「だからお前は翼の団を立ち上げた。」

所以你才成立了翼之團。

【帝釈天】

「ああ。」

是。

【阿修羅】

「お前はここへ戻り、彼らが、お前達が果たせなかった責務を今度こそ全うするつもりだったのか。」

你想要回到這裏,完成他們,完成你們未盡的職責。

【帝釈天】

「そうだ。」

是。

【阿修羅】

「だが彼らは、お前にこんな苦しみを背負わせたいが為にお前を救ったのではない。そう考えたことはないのか?」

但你有沒有想過,他們救你,根本就不是為了讓你背負這樣的痛苦。

【帝釈天】

「分かっている。しかし夢から覚める度に、またあの夜に戻ってしまう。自らここへ戻らねば、本當に解放されないと気づいたんだ。」

我知道,但是每次從夢中醒來,我依然會回到那個夜晚。我明白我必須真的回到這裏,才能真正的離開。

【阿修羅】

「帝釈天、お前はここから解放される、俺と一緒にな。二人でここを出た暁には、凱旋となるだろう。民は俺達を歓聲とともに出迎え、花束を贈る。十天衆さえも、冷たかったお前の家族さえも、自ら城から出て迎える。善見城の城門前で、お前の帰りを待っていてくれる。夜が更け、お前が眠りにつくと、夢の中ではかつての戦友と将軍が笑顔で迎えてくれる。彼らはこう告げる、お前が解放される時は來た、と。そして目が覚めると、そこには俺が、翼の団の仲間達がいる。俺達はこう告げる、お前が解放される時は來た、と。」

帝釋天,你會離開這裏的,我們會一起離開。等到我們離開這裏的時候,會是乘勝歸來。會有平民為我們夾道歡送,會有村人為我們送上鮮花。就連十天衆,就連一直冷待你的家人,都會親自出城來。在善見城城門下,恭迎你歸來。而到了夜裏,等你睡下,在你的夢裏,你曾記得的戰友還有将軍都會笑着走出來。他們會告訴你,你該走了。而等你醒來,你會看到我,會看到翼之團的兄弟們。我們會告訴你,你該走了。

【帝釈天】

「そんな日が本當に來るのか?」

會有那麽一天嗎?

【阿修羅】

「來るさ。」

會的。

……鬼域深淵、竜巣城の片側にある森の近く

——鬼域深淵,龍巢城一側的樹林附近

【鬼王酒呑童子】

「ほらな、あの二人ならきっと無事だと言っただろう。」

看吧,我說了他們兩個肯定沒事。

【煉獄茨木童子】

「見事な予想だ、友よ!」

摯友料事如神!

【毘瑠璃】

「治療は私に任せて。」

容我為你們醫治。

【帝釈天】

「なぜ毘瑠璃がここに?」

毗琉璃怎麽會在這裏?

【毘瑠璃】

「話すと長くなるけど、私はただ助けに來たの。」

說來話長,我只是來幫忙的。

【阿修羅】

「あと何人殘っている?」

還剩下多少人?

【翼団兵士甲】

「全部で二百三十五人です。」

一共是二百三十五人。

【帝釈天】

「早朝に點呼を取った時は千人以上いた軍隊が、夜には數百人しか殘っていないとは。」

清晨列隊時是千人之兵,到了夜裏,竟只剩下百人。

【阿修羅】

「まだ十分戦える。」

尚可一戰。

【帝釈天】

「雙方の実力がこんなにもかけ離れているんだ。援軍が來る兆しもないというのに、どうやって百人で城を攻め落とすつもりだ?」

實力如此懸殊,援兵又遙遙無期,如何憑百人攻下龍巢城?

【阿修羅】

「竜巣には門が二つある。本來はお前と俺が正門に陽動攻撃を仕掛け、光明天が兵士を率いて後門を攻めるはずだった。光明天は來なかったが、まだお前と俺がいるだろう。晝間に正門で熾烈な戦いを繰り広げた後に、まさか夜中また俺達が後門から奇襲をかけるとは、迦樓羅も予想出來まい。彼らは勝ったばかりで、守備に隙が生じているはずだ。つまり、陽動攻撃は既に完了している。」

龍巢有兩門,本該是你我佯攻前門,光明天率兵攻打後門。如今他雖然沒有來,你我卻還在。我們白天在前門一場大戰,迦樓羅定然不能預見夜裏會有人從後門奇襲。他們剛剛得勝,夜裏一定守備松懈,佯攻其實已經事成。

【帝釈天】

「守備が緩んだとしても、たった數百人の兵力で、どうやって城に入る?」

百人之兵,就算守備松懈又如何入城?

【阿修羅】

「俺が兵士を連れて城壁から潛入し、前哨と後哨の二手に分かれる。両側の城門を勝ち取ったら、正門で太鼓を鳴らす。その音を聞けば迦樓羅は兵士を集結させるはずだ。やつらがすぐには応戦できないよう、俺が前方で足止めする。後哨は太鼓の音を聞くなり、即座に城內から後門を開く。お前は兵士を率いて後門から城に入れ。哨所は無人、主将も不在、偽の情勢が太鼓で伝えられ、城門はがら空きだ。敵軍兵士の心は大きく亂されるだろう。お前の能力なら、必ず竜巣を撃破できる。」

我帶人從城牆潛入,一方前往前哨,一方去後哨。奪取兩側城門後,于前門擊戰鼓,迦樓羅聽到定會前去集結兵士。由我在殿前拖住他,讓他不能馬上迎戰,後哨聽到戰鼓,即刻從城內開啓後城門。你率兵從後門入城,屆時哨所已空,主将不在,戰鼓謊報軍情,城門大開,軍心大亂。以你的能力,定能一舉攻破龍巢。

【帝釈天】

「だめだ、あなた一人でどうやって迦樓羅の相手をする?私は共に城へ入る!」

不行,你一人如何對抗迦樓羅?我要跟你入城!

【阿修羅】

「お前はまだ弱っている、俺と城へ入るなど論外だ。それに、お前まで城に入れば、誰が兵士を率いて城を攻める?」

你此時身體虛弱,如何跟我入城,況且又由誰來帶兵攻城?

【帝釈天】

「迦樓羅には霊神體を無効化する神器がある。私がいなければ、あなたは再び暴走する。この戦に勝機はまるでない。あなたが死に急ぐのをただ見ているなど、私には出來ない。」

迦樓羅手中有讓靈神體失效的神器,如果我不在,你又會狂暴。這場戰勝算這樣低,怎能讓我看你送死。

【阿修羅】

「勝機がない?いや、俺の出陣こそ、最も勝算がある選択だ。玉醸を服用すると、ぼうっとし、戦意が削がれるとさっき言っていたな。霊神體も段々と無効化され、最終的には消えてしまうと。」

勝算低?不,這戰由我來是勝算最高的選擇。你剛才說喝了玉釀後,精神恍惚,戰意潰敗。靈神體陸續失去了作用,以至于徹底消失?

【帝釈天】

「そのとおりだ。」

确實如此。

【阿修羅】

「だがお前は今、正常に霊神體を使用することができている。」

但你現在卻能夠如常使用靈神體。

【帝釈天】

「玉醸を止めると、霊神體は徐々に復元され、今や完全に元通りになった。」

不喝玉釀後,靈神體逐步複原,現在已經恢複正常。

【阿修羅】

「琉璃城では、金翅鳥どもが大量の玉醸を所持していたが、どこから持って來たのかは未だ不明だ。その玉醸の作用は、今日俺達が目撃した法器と極めて似ている気がする。要するに、この二つは元から金翅鳥の策略によるものだろう。」

在琉璃城,鬼族們攜有大量玉釀,來源至今無人知曉。而玉釀的作用和今天我們見到的法器,似乎十分相似。或許二者本就是同源,都是金翅烏的計謀。

阿修羅はそう言いながら、霊神體を召喚した。彼の霊神體は既に元通りになり、六本の力強い觸手が殺気を放っている。

說着,阿修羅就召喚出了靈神體。他的靈神體已經恢複如初,六條觸手有力而充滿殺氣。

【阿修羅】

「霊神體の無効化は一時的なものだ、決して消えはしない。恐らく神器が吸い取ったのは天人の精神力であり、霊神體そのものではないだろう。そして、俺の精神力には底がない。帝釈天よ、人の□□には姿形があり、どんなに完璧無欠な戦士も、體力が盡きれば足を止めるし、戦死してしまう。だが心に限界はない。見ることも觸ることもできないが、萬物を受け入れることができる。心は焼かれず、破壊されない。足を止めることも、底を盡きることもない。俺は決して運命に易々と屈しない強者になると、お前に誓おう。お前も強者となり、二度と玉醸に手を出さないと俺に誓ってくれるか?再び迷いに陥った時、苦しみに苛まれた時、お前が思い出すのは過去ではなく……今の、あなたの友人を思い出してほしい。俺はお前を失望させない。」

靈神體的失效只是暫時,并非消失。恐怕神器所吸收的是天人的精神力,而非是靈神體本身。而我,最不缺的就是精神力。帝釋天,人的□□有形有界,再無懈可擊的戰士,會累到停步,也會戰死。然而心卻無界,雖然無法看到、觸摸到,卻能夠包容萬物。無法燒灼,也無法摧毀,永遠不會停步不前,永不會枯竭。我答應你去做一個強者,絕不輕易屈服于命運。你是為挽回我與魔神之戰的一意孤行。但我也希望你答應我,做一個強者,不要再碰玉釀了。我希望在你迷茫,深陷痛苦的時刻,你想起的不再是過去——而是你現在的友人。我不會讓你失望。

【帝釈天】

「約束する。では、夜明けに、竜巣で會おう。」

我答應你。那麽,天亮時,龍巢城見。

阿修羅は頷くと、背を向けた。

阿修羅點了點頭,轉過而去。

【阿修羅】

「兵士を二十人集めろ、俺と共に城へ入るぞ!」

清點二十人,随我入城!

【鬼王酒呑童子】

「おい、これを落としたぞ。」

喂,你落下了東西。

【阿修羅】

「これは?俺の剣か。」

這是?我的劍。

【鬼王酒呑童子】

「崖で拾ったものだ、確かに持ち主に返したぞ。」

是我在崖邊撿到的,現在物歸原主。

【阿修羅】

「ちょうどいいところに來てくれた、二人も俺と城に入ってくれないか?二人は鬼族だから、あの奇妙な神器に影響されない。」

來得正好,我正想邀請二位随我一同入城。二位是鬼族,不會受那個古怪神器的影響。

【鬼王酒呑童子】

「そのつもりだ。あの不気味な神器には、我々も興味がある。」

正有此意,那神器過于詭異,我們也興味十足。

【毘瑠璃】

「姉様も城にいるはず。もし彼女を見つけたら、どうか助けてあげてください!」

我姐姐也在城中,如果幾位在城中找見了她,請一定要救她!

【阿修羅】

「ああ、最善を盡くそう。では準備を整えて、城壁の下で待ち合わせよう。帝釈天、竜巣城の中で會おう。」

我會盡力而為。那麽稍作整理,我們在城牆下會合。帝釋天,龍巢城中見。

集められた天人戦士のうち、十人は帝釈天と共に後門へ回り込み、殘りの十人は阿修羅と共に正門から城壁を登った。晝間の城門での一戦を経て、鬼族の守備は緩み、失った兵力も未だ補充されていなかった。

清點的天人戰士十人随帝釋天繞到後城門,另外十人則随阿修羅自前門攀爬而上。因白天城門前一戰,鬼族守衛松懈,陣亡的兵力也尚且無人填補。

【翼団兵士甲】

「こんな所で酔いつぶれているなんて。この瓶。琉璃城でも見た事あるぞ。間違いない、これは玉醸だ。」

竟然爛醉如泥地躺在這裏。這些瓶子,我認得這東西,在琉璃城也見到了,是玉釀。

【翼団兵士乙】

「やつら、宴の祝杯に玉醸を飲んでいるのか?」

他們竟然将玉釀當成慶功用的酒?

【雷公鬼】

「うぐ、俺を毆ったのは誰だ?ああ、侵入者が、入っ、うぐぐぐ……」

唔,誰打我?啊,有入侵者,入唔嗚嗚嗚……

【翼団兵士乙】

「阿修羅様の予想通り、城壁を攻めるのは朝飯前のようだ。」

果然如阿修羅大人所料,奪取城牆毫不費力。

【阿修羅】

「お前達はここで待機しろ。迦樓羅の正殿に光が差した瞬間、太鼓を鳴らせ。」

你們幾個守在這裏,待迦樓羅大殿升起光亮之時,即刻擊鼓。

【翼団兵士乙】

「はっ!」

是!

阿修羅は數人を引き連れ、縄で城壁を降り、一直線に迦樓羅の正殿に向かった。

阿修羅帶領數人順着繩索爬下了城牆,徑直去往迦樓羅的大殿。

【煉獄茨木童子】

「ここも同じだ、警備の者達があちこちで酔い潰れ、空になった瓶が地面に散らばっている。」

這裏竟然也一樣,守衛早就醉的七七八八,四處都是空瓶子。

【翼団兵士甲】

「なぜここに大量の玉醸が?まさか本當に金翅鳥が玉醸を造っているのか?」

怎麽會有那麽多玉釀?難道說玉釀真是金翅烏所釀造?

【鬼王酒呑童子】

「敵の霊神體を害するための薬酒を自らも飲むなど、馬鹿馬鹿しいにも程がある。」

他們拿去損害敵人靈神體的藥酒,卻自己也喝,未免太荒唐了。

【阿修羅】

「それはさておき、迦樓羅と神器を探せ。」

先別管那麽多,給我找迦樓羅和神器。

【翼団兵士甲】

「阿修羅様、あちらを見てください!」

阿修羅大人,快看那裏!

【阿修羅】

「迦樓羅だ、やはり酔い潰れている。あの神器が無造作に羽の下に隠されている。」

是迦樓羅,果然也已經爛醉了。那樣神器竟然就這麽藏在他的羽翼下面。

【煉獄茨木童子】

「隣の檻を見ろ、女が一人閉じ込められている。」

看這旁邊的籠子,裏面竟然鎖了一個女人?

【蘇摩】

「あなた達は……誰?」

你們……是誰?

【阿修羅】

「しっ、靜かに。琉璃城城主姉妹の姉、蘇摩か?」

小聲點。你可是琉璃城城主兩姐妹中的姐姐,蘇摩?

【蘇摩】

「はい、私が蘇摩です……あなた達は何者ですか?」

我是蘇摩……你們是什麽人?

【阿修羅】

「我々は天人の援軍だ。お前の妹、毘瑠璃の頼みでお前を助けに來た。彼女は城外で待っている。酒呑童子、蘇摩は重傷を負っている。先に彼女を城外に逃してくれないか?」

我們是天人的援兵,受你妹妹毗琉璃囑托,來救你出去,她就在城外。酒吞童子,蘇摩身負重傷,你們能否護送她提前出城?

【煉獄茨木童子】

「しかしあの神器が……」

可那神器……

【鬼王酒呑童子】

「もちろん問題ない、今すぐ城を出よう。茨木童子、黒焔で鎖を溶かせ。くれぐれも物音を立てるな。彼女を連れ出すぞ。」

當然沒問題,我們這就出城。茨木童子,用黑焰燒化鎖鏈,切記不要弄出聲音,跟我一起帶她往城門走。

阿修羅は慎重に迦樓羅に近づき、琉璃心という名の神器を取り出し、召喚した霊神體を琉璃心にぶつけた。何度試しても、何の効果も得なかった。すると、突然瑠璃心が眼球のように開いた。

阿修羅小心靠近迦樓羅,将那名為琉璃心的神器取出,釋放靈神體向琉璃心砸去。試了數次後,卻毫無效果,誰知琉璃心突然如同眼球一般睜開。

【阿修羅】

「破壊できないだと?」

無法破壞嗎?

【翼団兵士甲】

「阿修羅様!これは主人と共鳴しているようです、迦樓羅が目を覚まします!」

阿修羅大人!這東西似乎和主人有所感應,那迦樓羅似乎要醒來了!

【迦樓羅】

「一體誰だ、私の安眠を邪魔する者は。またお前か!晝間與えた教訓では足りなかったようだな!全員起きろ!畏れ知らずの侵入者を皆殺しにしろ!」

是什麽人,膽敢擾亂我安眠。竟然又是你!看來白天時給你們的教訓還不夠大!都給我起來!殺了這幾個膽大包天的入侵者!

【阿修羅】

「はは、そう慌てるな。何か失くしたものはないか?」

哈哈,先別這麽着急,你不覺得身上少了什麽東西?

【迦樓羅】

「……琉璃心?お前、琉璃心を持って行ったのか?」

……琉璃心?你拿了琉璃心?

【阿修羅】

「そうだ、瑠璃心はここにある。取れるもんなら取ってみろ!(お前は琉璃心を持って後門へ急げ、そこで帝釈天と合流しろ。)」

沒錯,就在我這裏,有本事你來拿啊!(你拿上琉璃心,趕快往後城門那跑跟帝釋天彙合。)

【翼団兵士甲】

「(はっ。)」

(是。)

【阿修羅】

「お前達は別々の方向に向かって走れ、やつは一度に全員を追うことはできない。俺が後ろで足止めして時間を稼ぐ。」

你們幾個,分頭跑,他沒法一次追所有人,我在後面攔住他拖延時間。

阿修羅はそう言うと、手中の霊符に火をつけて宙に投げた。火の光が夜空で弧線を描き落ちていく。

城壁の方から突然、耳を聾する太鼓の音が轟き、城中の警備の者達が身を起こした。

阿修羅随即點燃了手中的符咒朝着空中扔去,劃破夜空的火光一落。

城牆方向突然響起震耳欲聾的戰鼓聲,城中的守衛們聞聲而起。

【翠甲鬼】

「なぜ太鼓の音が聞こえる?侵入者か?」

怎麽有人擊戰鼓?是有人入侵?

【雷公鬼】

「また正門の方か。誰かが諦めきれず、闇に紛れて橋を渡ろうとしているのか?」

又是前城門的方向,難道說又有人不死心,趁夜色要渡橋?

【翠甲鬼】

「迦樓羅様の正殿にも明かりがついている、何かあったのか?こ、これはどっちに向かうべきだ?」

迦樓羅大人的大殿也燈火通明,是出了什麽事嗎?這、這要先去哪邊?

【藍爪鬼】

「馬鹿野郎!迦樓羅様の正殿でのことは迦樓羅様が始末する、我々の出る幕などない!早く正門に行け!」

蠢貨!迦樓羅大人大殿裏的事情迦樓羅大人自己會管,哪裏輪得到我們!還不快去前門看看!

【翠甲鬼】

「行くぞ!みんなで正門へ!」

走!大家去前門!

……竜巣城、裏門の外

——龍巢城,後城門外

【翼団兵士乙】

「帝釈天様、照明の術が発動されました。帝釈天様の予想に違わず、鬼族は全て正門のほうに向かいました。」

帝釋天大人,照明法術亮了,正如大人所預料的,全城的鬼族都在往前門跑。

【帝釈天】

「裏門を突き破るぞ、皆、私について中に攻め入るんだ!」

砸開後城門,所有人,跟我進城!

……竜巣城、城內

——龍巢城,城內

【阿修羅】

「瑠璃心はこの手の中にあるぞ、取りに來い。」

琉璃心就在我手中,你來拿啊。

【迦樓羅】

「その腕ごと切り落とすぞ!」

看我一刀砍下你這只手!

【阿修羅】

「いい刀ではあるが、殘念ながら、不甲斐ない主を持っているな。」

刀倒是把好刀,可惜了,配了你這麽個不會用的家夥。

【迦樓羅】

「手の中には何もないだと、貴様、騙したな!」

手是空的,你竟敢詐我!

【阿修羅】

「その通りだが?おまえだけではない、この城ごと騙した。」

詐你又怎樣?我不僅敢詐你,還敢詐你全城呢。

【迦樓羅】

「城ごとだと?しまった!…ふっ、貴様には分からないだろうが、瑠璃心と私とは一心同體のようなものだ。その気になれば、いつでもそのありかを突き止めることができる。瑠璃心は裏門のほうへ移動している、貴様の仲間も裏門にいるのだろう。我が寶物に手を出す者は、決して許さない!」

全城?糟了!……呵,不過你怕是還不知道,琉璃心和我是二體一心吧。只要我想,随時都能找到它的所在。琉璃心在往後城門去,你是準備讓你的人從後門接應吧。誰敢碰我的寶物,我就讓誰粉身碎骨!

迦樓羅は突然目を閉じ、月を見上げて鳥のような鳴き聲を出した。鋭い聲が夜空に響き渡る。

しばらくして、彼は目を開けて高笑いした。そして四つの翼を使って力強く羽ばたき、真っすぐに裏門のほうへと向かっていく。

只見迦樓羅突然閉上雙眼,仰頭對月一聲嘶鳴,尖利的嘶鳴在夜空中回蕩。

片刻之後,他睜開雙眼大笑,跳起來揮舞着四翼,徑直朝着後城門的方向沖去。

……竜巣城、裏門の外

——龍巢城,後城門外

【翼団武将】

「帝釈天様、誰か來ました!」

帝釋天大人,有人來了!

【翼団兵士甲】

「帝釈天様!」

帝釋天大人!

【帝釈天】

「阿修羅は?阿修羅は來ていないのか?」

阿修羅呢?怎麽他沒來?

【翼団兵士甲】

「帝釈天様、この瑠璃心は破壊できません。どうかこれをお持ちください、騎兵に命じ、できるだけ遠くへ!」

帝釋天大人,這琉璃心無法破壞,您快将它拿去,命騎兵帶上,有多遠跑多遠!

【迦樓羅】

「させるか!くらえ!」

休想!看刀!

【翼団兵士甲】

「ぐあ、ゴホ。また、あと一歩のところで。帝釈天様、これを……」

嘎啊,咳。竟然還是,差了一步嗎。帝釋天大人,接好……

【迦樓羅】

「それに觸るな!」

休想拿走我的寶物!

迦樓羅と帝釈天は、同時に瑠璃心を目掛けて駆け出した。時を同じくして、阿修羅も駆けつけ、迦樓羅のほうへ飛び出した。迦樓羅と帝釈天がほぼ同時に瑠璃心に觸れる寸前に……

迦樓羅和帝釋天同時朝着琉璃心沖了上去。與此同時,阿修羅趕到,朝着迦樓羅的方向沖出。就在迦樓羅和帝釋天同時即将觸碰到琉璃心的瞬間——

【阿修羅】

「その腕、もらった!」

你的手臂我收下了!

【迦樓羅】

「ぐあああ!腕が!腕が!貴様!卑しい天人め、よくも!その六本の霊神體を全て切り落とし、瑠璃心に食わせてやる!うわあああ!」

啊啊啊啊!我的手臂!我的手臂!你竟敢!你這卑劣的天人,你竟敢!我要砍斷你那六條靈神體,喂我的琉璃心!唔啊啊啊啊!

突然、迦樓羅の全身を狂風が包んだ。

狂風突然冒出,環繞着迦樓羅全身。

【帝釈天】

「まずい、この風は瑠璃心を狙っている!」

不好,風朝着琉璃心來了!

瑠璃心は狂風に巻き上げられたが、それを手放さなかった帝釈天も道連れとなった。

琉璃心跟着狂風飛舞起來,帝釋天死死握住琉璃心被一并帶離了地面。

【帝釈天】

「これは戦士達が命と引き換えに手に入れたものだ、手放すものか!」

這是戰士們拿命換來的,我絕不會放手!

【阿修羅】

「帝釈天、早く手を離せ!」

帝釋天,快放手!

【迦樓羅】

「目を開けろ、瑠璃心!」

睜開眼睛吧,我的琉璃心!

【帝釈天】

「うわああああ!」

哇啊啊啊啊!

瑠璃心が再び禍々しい瞳を開けて、震動で帝釈天を振り落とし、空に昇っていった。そして以前より何百倍もまぶしい光を放ち、竜巣中に巨大な衝撃を與えた。

琉璃心再度睜開了詭異的瞳孔,震動着将帝釋天丢了下來,升向空中。它放射出比此前耀眼百倍的光芒,巨大的沖擊席卷了整個龍巢。

【翼団兵士乙】

「この嵐のような衝撃を受けると、霊神體は砂の如く吹き散らされ、風の中に消えてしまうのか?」

這如同暴風一般的沖擊,靈神體竟然如同沙石一樣分解,被卷進風中消失了?

【翼団兵士甲】

「俺達だけじゃない、見ろ!戦士達の霊神體は全てひき潰され巻き上げられてしまった!これじゃどう戦えばいいんだ!」

不光是我們,快看!所有戰士的靈神體都被碾碎後卷走了!這可如何戰鬥!

【雷公鬼】

「迦樓羅様を怒らせたな、てめえらはもう終わりだ!」

惹怒了迦樓羅大人,你們完蛋了!

【翠甲鬼】

「やつらの霊神體が消えたぞ!一人も逃すな!」

他們沒靈神體了!都給我殺!

【翼団兵士乙】

「恐れるな!霊神體は消えたが、我々にはまだ武器がある!例え武器が折れても、まだ腕がある!行け!仲間や家族の敵を討て!」

怕什麽!沒有靈神體,我們還有刀劍武器,刀劍斷了,還有手!沖啊!為戰友家人們報仇!

竜首も崖全體が震動し、嵐の中心にある瑠璃心は周囲から精神力を吸い続けている。前線に赴く天人の援軍、城壁の上で金翅鳥と抗戦している戦士達、城の中に侵入しようとしている金翅鳥達……全ての精神力が、嵐の中心にある瑠璃心に押し寄せる。天人の兵士達の霊神體が次々に消え、空を飛ぶ金翅鳥達も矢を受けたように失墜して地に落ちた。

整個龍首崖都為之震顫,琉璃心如同暴風之眼般不斷吸收周圍的精神力。趕往前哨支援的天人軍隊,在城牆上抵禦金翅烏的戰士們,自城外試圖入城的金翅烏們——所有精神力,都被迫湧向暴風中心的琉璃心。只見天人士兵們的靈神體一個個潰散,飛行的金翅烏士兵們如同中箭一般地從空中落下。

【阿修羅】

「帝釈天?具合は?」

帝釋天?你怎麽樣了?

【帝釈天】

「平気だ、ただ霊神體が使えない……今日はもうこりごりだ、何度も高い所から落とされ、その度にあなたに受け止めてもらった。」

我沒事,只是使不出靈神體……今天可真是,來來回回讓人從高處往下扔,還次次都讓你接住了。

【阿修羅】

「お前は飛べないくせに、高いところが好きだ。今後お前が高いところに立つ時は、俺が側にいなければいけないな。」

你分明不會飛,卻着實喜歡往高處跑。看來以後你每次站在高處,我都要在場才行。

【帝釈天】

「迦樓羅は?」

迦樓羅呢?

【阿修羅】

「安心しろ、俺の霊神體はまだ使える、やつは俺に任せろ。言ったはずだ、共に勝利し故郷へ錦を飾って、お前の昔の仲間達を弔うんだ。」

放心,我的靈神體還能用,我去解決他。我說過的,我們一起乘勝歸來,再告慰你曾經的戰友。

【迦樓羅】

「分を弁えろ!貴様の霊神體は既に揺らつき、消える寸前だが?」

不自量力!你的靈神體已經時有時無,明明滅滅,怕是要支持不住了吧?

【阿修羅】

「弁えていないのはお前だ。お前の腕を切り落とした瞬間、勝負は既に決まった。今のお前はただ神器にすがっているだけだ。橋にいた時、お前は俺から逃げて、帝釈天を襲った。敗北を前に、お前は最後に瑠璃心に賭けるしかなかったんだ。つまり、俺は別にお前を倒さなくてもいい。瑠璃心さえ倒せば、竜巣城の敗北は、もう覆せない。」

不自量力的是你。在我斬斷你手臂那一刻,就已經分出了勝負。你如今不過是靠神器支撐,在橋上時,你就不敢對上我,而是襲擊帝釋天。現在敗局已定,你只能靠琉璃心最後放手一搏。換言之,我根本無需對上你。我只需要打敗琉璃心,龍巢城的戰敗,就已成定局。

【迦樓羅】

「瑠璃心は紛れもない正真正銘の神器だ、貴様のような卑しい天人になど負けはしない!」

這琉璃心是真正的神器,又怎會敗給你這樣卑劣的天人!

【阿修羅】

「俺の読みが正しければ、それは精神力を食らうことで天人の霊神體を無効化にしている。しかし、□□には限界があるが、精神は盡きることがない。ある者は揺るぎのない精神で善をなし、ある者は盡きない狂気によって、殘虐を極める。心の力は永遠に盡きない。悪人が悪をなそうとも、善人はそれで善をなすことをやめない。同様に、善人が善をなしても、悪人は決して悪をなすことを諦めない。精神力は力にも、魔にもなれる。そして俺の力は、魔の中の魔だ!」

如果我沒猜錯,它是靠吸□□神力來使天人靈神體失效。但是,一個人的□□有限也有界,精神卻無窮無盡。有人依靠堅定不移的精神去與人為善,有人則因為無盡的狂氣,嗜血殘暴無惡不作。心的力量綿綿不絕,善人不會因為惡人為惡就停止為善。惡人也不會因為善人為善,就停止作惡。精神力可以是力量,但也可以是邪魔。而我的力量,正是邪魔中的邪魔!

【迦樓羅】

「どういうことだ、なぜいくら吸い上げようと、やつの力は、霊神體は、完全に消滅しない?むしろ、より早く再生している?」

這是怎麽回事,他的力量竟然無論如何吸收,靈神體都不會完全消失?甚至再生得越來越快?

【阿修羅】

「それはな、俺の霊神體はマグマでいっぱいの火山のように、いくら噴出しても盡きないからだ。これは全部お前をもてなすために用意した、心行くまで楽しもうじゃないか。」

因為我的靈神體正是這樣一口裝滿了岩漿的火山,取之不盡用之不竭。全都是為你準備的,好好享受吧。

【迦樓羅】

「邪気、邪気だ!一體どうしてやつが、こんな桁外れの邪気を抱えている?邪気に體が侵されている?!うわああ!!これほどの邪気には耐えられない、□□が、もうすぐ限界を迎える、うわあああ!苦しい!苦しい!」

煞氣,是煞氣!他的身上為何會有如此多的煞氣?這些煞氣在侵入我的體內?!啊啊啊!!我無法承受這樣多的煞氣,我的肉身,很快就要支撐不住了,唔啊啊啊!好痛苦!好痛苦啊!

【阿修羅】

「ははは!どうだ?苦しいか、楽しいか、絶望したか……?この叫び、実に素晴らしい……!ははははは……」

哈哈哈!如何?痛苦嗎,愉悅嗎,絕望嗎……?這叫聲,實在是……美妙啊!哈哈哈哈哈……

【帝釈天】

「まずい、阿修羅が狂暴になっていく…もう暴走寸前だ!このままでは、例え勝っても、甚大な被害を受けてしまう!瑠璃心がかつてないほど暗くなっている。今のうちにあれを破壊すれば、きっと阿修羅を助けられる。」

糟了,阿修羅變得越來越殘暴了……他要開始狂暴了!這樣下去,就算贏了,也會損傷慘重!琉璃心已經變得無比黯淡,趁現在毀掉它,一定能夠幫到阿修羅。

帝釈天はなんとか體を動かし、嵐の中心にある瑠璃心に向かって進み始めた。

帝釋天支撐起身體,朝着暴風中心的琉璃心追了過去。

【迦樓羅】

「許さん!瑠璃心に觸れることは許さん!死ね、天人ども!死ね!天人は皆くたばるべきだ!」

不許!我不許你們動它!去死吧,天人!去死吧!所有天人都該死!

【阿修羅】

「帝釈天?帝釈天は俺が守る。迦樓羅、くたばれ!」

帝釋天?沒有人可以傷害他。迦樓羅,受死吧。

その瞬間、阿修羅は地に刺さった刃を抜き、迦樓羅の頭を狙って剣を振り下ろした。迦樓羅の體は頭の真ん中から、真っ二つに切り裂かれた。

就在這一瞬,阿修羅一把拔起了插在地上的長劍,朝着迦樓羅的頭頂劈去。将迦樓羅從頭向下,劈成了兩半。

【迦樓羅】

「ぐあああ……!」

啊啊啊——!

【帝釈天】

「まずい、瑠璃心が!」

不好,那琉璃心!

【阿修羅】

「帝釈天!気をつけろ!」

帝釋天!小心!

【帝釈天】

「うっ…!」

唔……!

迦樓羅の血が噴き出すと同時に、瑠璃心の周りには空間が砕けたような波紋が現れた。空で強烈な爆発が発生し、精神力もつられて爆発し始めた。爆発は長く続いたが、ついに落ち着いた。

随着迦樓羅血噴濺而出,琉璃心的周圍浮現出黑洞撕裂般的波紋。在空中轟然炸裂開來,引發了精神力噴濺的爆炸。爆炸持續了許久,終于安靜下來。

【帝釈天】

「お、終わったのか?」

結、結束了嗎?

【阿修羅】

「終わった、俺達の勝ちだ。(瑠璃心の爆発の衝撃はそろそろ効いてくるはずだ)」

結束了,我們贏了。(呵,這琉璃心爆炸的波動應該馬上起效了。)

【帝釈天】

「その通り、あなたは成し遂げた。阿修羅、その額は?」

你說的沒錯,你做到了。阿修羅,你的額頭?

【阿修羅】

「?」

【帝釈天】

「あなたの額に、第三の目、天眼が現れた。天人にはとても珍しいことだ。」

你的額頭上,浮現了第三只眼睛,是天眼。這對天人來說是很少見的。

【阿修羅】

「第三の目?道理でいつもよりお前がよく見えるわけだ。」

第三只眼睛?怪不得看你看的比平常要清楚。

【帝釈天】

「その冗談は、いつもどおりくだらないが。はは、はははは…!」

你的笑話,真是一如既往的冷。哈哈,哈哈哈哈……!

【阿修羅】

「ははは、結局笑っているじゃないか。」

哈哈哈,那你還不是笑了。

【帝釈天】

「阿修羅、あなたの勝ちだ!あなたは狂暴さによる支配から逃げ出すことができた!これからも、あなたは必ず勝ち続ける!もしこの世の果てに勝者が一人しか存在できないとしたら、それはきっとあなた、阿修羅なんだ!」

阿修羅,你贏了!你擺脫了狂暴的影響!你将來一定會一直贏下去!如果這世間的盡頭只能有唯一一個勝者,那一定會是你,阿修羅!

【毘瑠璃】

「姉様?姉様!」

姐姐?姐姐!

【蘇摩】

「毘瑠璃、本當にあなたなの!よかった、瑠璃城はどうなってるの?皆は?」

毗琉璃,真的是你!太好了,琉璃城如何了?大家都如何了?

【毘瑠璃】

「瑠璃城も、皆も無事。あとは姉様だけ、皆も待ってるわ!」

琉璃城還在,大家都還在,我們都在等你,就差你了姐姐!

【阿修羅】

「いったいどういうことだ?瑠璃心は壊れたのに、なぜ迦樓羅の□□はゆっくりと元に戻ろうとしているんだ?」

怎麽回事?琉璃心毀了,迦樓羅的肉身反而開始緩慢地複原?

【帝釈天】

「これは…阿修羅、見ろ。これは、天人一族の霊神體、黒翼か?ずっと隠されていたのか。まさか?ずっと敵だと思っていた、異族の連中を率いて天域に攻め入り、十天衆の住まう善見城を狙っていた者が…竜巣城の首領迦樓羅は、天人だったのか!堕ちた天人、天人を絶滅させたい天人。結局、天人を一番憎んでいたのは天人自身だったのか、一體なぜだ?」

這……阿修羅你看。這是,天人一族的靈神體,黑翼?一直以來被掩蓋在下面。怎麽會?一直以來的敵人,一心想要率領外族攻破天域,對十天衆所居住的善見城虎視眈眈……龍巢城的首領迦樓羅,竟然是天人嗎!堕落的天人,将天人趕盡殺絕的天人。到頭來最憎恨天人的卻是天人自己,這到底是為什麽?

【煉獄茨木童子】

「しかし、迦樓羅が神器瑠璃心を操っているというより……むしろ瑠璃心に操られていると言うべきだ……玉醸を飲み、夢に落ちたあの天人達のようにな。」

不過,與其說那迦樓羅在控制着那神器琉璃心……倒更像是那琉璃心在掌控他……就像是飲了玉釀,沉浸在夢中的那些天人。

【鬼王酒呑童子】

「その通り、瑠璃心の裏には必ず誰かいるはずだ。(茨木童子、気づいたか?ついさっき瑠璃心が爆発した後、深淵に送られていた霊力が止まった。)」

你說的不錯,這琉璃心背後一定另有其人。(茨木童子,你察覺了嗎?就在剛才琉璃心炸裂後,往深淵輸送的靈力停止了。)

【煉獄茨木童子】

「(まさか黒幕は、本當に迦樓羅だったのか。)」

(難道說那迦樓羅真的是罪魁禍首?)

【鬼王酒呑童子】

「(深淵の霊力を吸っていた者と、瑠璃心の支配者は、別の人物のはずだ。先に対処すべきのは前者だ、急いで行動するぞ。)」

(這吸取深淵靈力的幕後之人,和這琉璃心的掌控者,應該是兩個不同的人。雖說有人打斷了靈力,但最首要的還是前者,我們得加快行動了。)

【十天衆の使者】

「翼の団の兵士達よ、光明天様がお越しだ、早く出迎えの準備を。」

諸位翼之團的将士,光明天大人到了,速速出來迎接。

【阿修羅】

「ふっ、必要な時はどこにもいなかったが、こんな時には現れるのか。」

呵,該來的時候不來,這時候反而來了。

【帝釈天】

「恐らく、わざとゆっくり來たんだろう。私達と金翅鳥が共倒れになる隙をつき、手柄を橫取りするつもりで。」

恐怕,是故意拖延,算準了我們和金翅烏兩敗俱傷,好來冒領龍巢城的功勳。

【阿修羅】

「殘念だが、それは葉わなかったな。」

那怕是不能如他意了。

【光明天】

「まさか本當に迎えに來るとは。翼の団の阿修羅は殘虐で、禮儀知らずだと聞いていたが。迎えに來てくれるとは、光栄だな。」

沒想到你們真會出來迎接我,都說翼之團的阿修羅為人暴虐,不近人情。肯給我這個面子,不甚榮幸啊。

【阿修羅】

「もちろんただ迎えに來たわけじゃない。」

我來自然是有話要說。

【光明天】

「言ってみろ。」

請說。

【阿修羅】

「光明天様はご存知か?金翅鳥一族の鬼王迦樓羅だが、鬼族ではなく、善見城の天人だった。誇り高き天人は、鬼族を毛嫌いしているが、堕ちた天神は、悪鬼以下の存在に成り下がる。」

光明天大人可知道,這金翅烏一族的鬼王迦樓羅并非鬼族,而是善見城的天人?天人自诩高貴,不與鬼族同流合污,倘若堕落了,竟然是連惡鬼都不如。

【光明天】

「貴様!」

你!

【阿修羅】

「光明天様のことも、いつもよりはっきり見える。」

我如今看光明天大人,可是比往昔看得要清楚多了。

【光明天】

「これは……天眼?」

這是……天眼?

【阿修羅】

「他の十天衆の皆様も、祭壇から降りてきて、姿を見せてくれればいいのだが。」

不知道其他幾位十天衆的大人,可願意從神壇高臺上走下來,讓我也看個清楚。

【光明天】

「貴様……!」

你這家夥……!

【鬼王酒呑童子】

「(茨木童子、この深淵の霊力、明らかに二つの勢力が衝突している。俺たち以外にも、何者かが霊力を止めようとしている。どうやらここでの物語も、終わりを迎えようとしているようだ。)」

(茨木童子,這深淵靈力的背後顯然有兩股勢力在交鋒。除了我們之外,還有人在參與阻斷靈力之事。而這故事也快發展到結局了。)

【煉獄茨木童子】

「(友よ、それはつまり…?)」

(摯友你是說……?)

【鬼王酒呑童子】

「(もうすぐだ。備えておけ、茨木童子。)」

(看來就快了。做好準備吧,茨木童子。)

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