第52章 ①序曲
終焉之章 ①序曲
逢魔が時、晝と夜が交わり、太陽と月が同時に姿を現す。都の外では、門の下に蛇魔が群がっている。山の中から鬼族が現れ、遠方より都に向かってくる。
逢魔之時,白晝與黑夜交彙,日月同時出現在空中。
京都城外,成群的蛇魔在門下湧動,山林中的鬼族紛紛顯現,自遠處朝着京都前來。
【都の陰陽師】
「兵力はどれくらい殘っている?鬼族の軍勢がやって來た時、まだ戦える兵士はいるか?」
還有多少兵力?等到鬼族之軍打到門前可有兵迎戰?
【都の兵士】
「門を破って入ってくる蛇魔を食い止めるだけで精一杯だった。お前ら陰陽師が腰を抜かさなければいいが。」
我們只擋住蛇魔沖破城門就已是筋疲力盡了。你們這些陰陽師別被吓破膽就算萬幸。
【小白】
「なんて失禮なことを言うんですか!陰陽師様達はわざわざ助けに來ているんですよ!」
真是沒禮貌的家夥,陰陽師大人們分明是來幫忙的!
【晴明】
「私は晴明、式神と陰陽寮の陰陽師達を引き連れ、戦いの手助けをするために參上した。」
在下晴明,率式神與陰陽寮衆陰陽師前來助戰。
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【都の兵士】
「晴明様でしたか、これは失禮いたしました!」
原來是晴明大人,失禮了!
【八百比丘尼】
「このような異変を前に、経験豊富な都の兵士も戸惑いを隠せなかったんですね。人間は昔から理解できない現象を恐れるもの。霊を見たり、霊と話したりできる陰陽師達もその一つです。陰陽師はもとより、平民の出の戦士を不快にさせる貴族ばかりですし。」
面對如此異象,見慣了大場面的京都士兵也自亂陣腳了。人類向來對自己無法理解的現象尤為懼怕,能夠看見靈體并與之對話的陰陽師們,也在這一類中呢。更不要說,陰陽師裏又盡是讓平民出身的戰士們不喜的貴族呢。
【源博雅】
「おい、貴族が全員そうだと思われるような言い方はやめろ。」
喂,別說的好像貴族就一定目中無人好不好。
【小白】
「博雅様が仰っても、説得力がないですね。」
這話由博雅大人說出口就很沒信服力。
【源博雅】
「あ?じゃあ神楽が言うなら説得力あるだろ、神楽?」
哦?既然如此就讓神樂來說總沒問題了吧,對不對神樂?
【神楽】
「……うう。」
……唔。
【源博雅】
「神楽、今日は特に元気がないようだが、どうした?」
神樂,你今天怎麽好像特別沒精神。
【神楽】
「大丈夫、ただ頭が痛いだけ。悪夢を見たから、寝不足なのかも。」
我沒事,只是有些頭痛,大概是晚上做了噩夢所以沒睡好。
【源博雅】
「なんだと?なんでもっと早く教えてくれなかったんだ?」
什麽?這樣的事情怎麽不早點說?
【神楽】
「私……今日戦いがあるのは知ってたのに、こんなに風になるなんて……だから……」
我……明明早知道今日會有一戰,但沒料到自己竟然會這樣膽怯,所以……
【源博雅】
「心配かけたくないから、何も言わなかったのか?」
所以怕我們擔心就不願意對我們說嗎?
【小白】
「神楽様、気にしなくていいんですよ!何しろ、あの邪神と戦うと思うと、小白も背筋が寒くなります。」
神樂大人不必介意!畢竟一想到要和那個邪神作戰,連小白也會有全身的毛都倒豎的感覺。
【晴明】
「……神楽、その悪夢はどんな內容だったんだ?」
……神樂,你口中的噩夢,是怎樣的內容?
【神楽】
「え?いくつかの、遠い記憶……巫女達が泣き叫ぶ夢だったり、邪神に生贄として捧げられる夢だったり……神々の審判場で、神々を取り巻く蛇達も見た……」
欸?就是看到一些遙遠的記憶,有時是夢到巫女們在哭訴,有時又是作為祭品被獻給邪神……
甚至我還看到了諸神的審判場,黑暗的蛇群們籠罩了衆神……
【小白】
「それで、小白達が心配すると思ったんですか?」
所以就怕我們擔心嗎?
【神楽】
「それだけじゃない!その夢の中で、時々……今までにない感覚もあった。憎しみ、復讐、恐ろしいことをたくさんしたい……何か力が湧いてくるの。それに誰かが耳元で囁いて、心を惑わそうとしてくる……」
不僅是這樣!在那樣的夢境中,我有時……甚至會有一種從未有過的感覺。憎恨,複仇,想要做出很多可怕的事情來……似乎有什麽力量在我體內湧動,還有人在我的耳邊呢喃蠱惑……
【八百比丘尼】
「ふふ、やはりそうでしたか。」
呵,果然如此。
【源博雅】
「どういう意味だ?」
你這話什麽意思?
【晴明】
「博雅、落ち着け。八百比丘尼もこんな時に仲間をからかうな。神楽が見たのは恐らく、ヤマタノロチが巫女を呑み込んだ時の記憶の欠片だ。神楽が感じた悪意は、神楽自身のものではなく、巫女達の恨みと蛇神の持つ悪意の現れだ。おそらく彼はこのような方法で、神楽の力を取り戻そうとしている。」
博雅,稍安勿躁,八百比丘尼也不要在這種時候作弄同伴才是。神樂,你所看到的恐怕還是八岐大蛇吞噬巫女時的記憶碎片。你心中的惡意也并非是來自你本身,而是巫女們的怨恨,以及蛇神所擁有的惡意的體現。他恐怕是想通過這種方法,重新奪取你的力量。
【八百比丘尼】
「以前面霊気さんにお願いして、神楽さんの體內にある魂の欠片を分解したのですが。しかし今、蛇神の力は極限に達しています。再び彼女の魂を蝕もうとするかもしれません。だから神楽さん、今後またこういうことがあったら、一人で抱え込まないで、すぐに教えてくださいね?」
雖然我們曾經請面靈氣拆分過神樂身體中的靈魂碎片。但此時蛇神的力量正盛,再次試圖侵蝕她的靈魂也未可知。所以說神樂,以後再發生這種事情,不要一個人藏在心裏,要提前告訴我們,明白了嗎?
【神楽】
「……分かった。」
……好。
【源博雅】
「あのクソ邪神が……何度も懲りずに神楽の力を欲しがりやがって!これで俺がやつを倒す理由がまた一つ増えたな。」
那可惡的邪神,竟一而再,再而三地觊觎神樂的力量嗎!我源博雅要讨伐他的理由又多了一條。
【小白】
「博雅様は相変わらず元気ですね。」
博雅大人倒是一如既往的有精神呢。
【晴明】
「陰陽寮の調査によると、この前例のない異象は、ヤマタノロチが都の近くに置いた祭祀結界によるものだという。彼が狹間を去った時、いつか世間を裁くと私に言っていたが、その裁きはもう間近に迫っているのかもしれない。」
眼前異象的規模前所未有,根據陰陽寮的調查,正是八岐大蛇在京都附近布下的儀式結界所引發的。當初他離開狹間時,曾對我宣揚要審判世間,他所說的審判,也許已近在眼前。
【???】
「よく言った。」
說的不錯。
【小白】
「黒晴明様!」
黑晴明大人!
【黒晴明】
「黒夜山から來る道中で城外の慘狀を見た。お前の推測が現実になりそうだな。」
我從黑夜山而來,一路上見了城外的慘狀,你的猜測恐怕馬上就要成真。
【燼天玉藻前】
「確かに城外は混沌としているが、二人が無事で安心した。」
的确,城外亂成一團,不過見你們二人都平安,我也算放心了。
【晴明】
「玉藻前。」
玉藻前。
【黒晴明】
「安心するのはまだ早い。逢魔の原から來た時に見たはずだ。陰気に侵食されて感覚を奪われた鬼族達が、軍隊となって都に向かっている。都の全住人がよく訓練された兵士であったとしても、せいぜいもって半日だろう。」
現在放心還為時尚早。你從逢魔之原過來想必也看到了,受陰氣侵蝕喪失理智的鬼族們正在集結成軍,朝着京都湧來。就算全京都的人都是訓練有素的兵士,最多也敵不過半日。
【晴明】
「早くなんとかしなければ。」
看來必須盡快應對了。
【燼天玉藻前】
「私は都がどうなろうが構わないが、お前達二人が守る気ならば、私も蛇神に會ってもいい。私はお前達二人が仲良くしていることに驚きを隠せないが……和解したのか?」
京都存亡我倒是不在意,不過要是你們兩個都決心堅守,我自然也願意會一會那位蛇神。在我看來,你們兩個和和氣氣地走在一起才讓我驚訝呢……難不成是和好了?
【黒晴明】
「ふん、こいつに言うことなどない。ただ今回は彼が自ら頼んできたからな。かなり無禮な頼みだが。しかし、こんなにも大きな借りを作るとは……後で彼が恩返しの方法を考えて苦悩するかと思うと、なかなか愉快だ。」
哼,我和這家夥可是沒什麽好說。只不過這次他親自求我,雖然提出的要求相當無禮。但能讓另一個我欠上這樣天大的人情,想到他日後只要一思考如何償還就如坐針氈,我就心情不錯。
【燼天玉藻前】
「もう一人の自分の性格について、いくらか誤解をしているようだな……だが、それをきっかけに二人が仲良くなれるのなら、それはいいことだ。」
我覺得你可能對另一個自己的性格有些誤解……不過以此為契機能看到你們二人和睦相處,也算不錯。
【小白】
「玉藻前様、こんな時にそんな話はやめましょう……」
玉藻前大人這種時候就不要拆臺啦……
【晴明】
「恩は必ず返すから、秘密を守ってくれ。」
你的恩情我日後自會償還,還請你替我守住秘密。
【黒晴明】
「もちろんだ。しかしその前に、恐らく他の客が來る。」
那是自然。不過在那之前,你怕是還有別的客人要招待。
突然真っ黒な海水が噴き出し、荒波の中から海國鬼船の巨體が姿を現した。それと同時に、空に浮かぶ鬼火が海中に突っ込み、大波を切り裂く。水と火が出會い、潮煙が上がるとたちまち霧となって漂い、人々の視界を遮った。霧が徐々に晴れ、鈴鹿禦前と酒呑童子が姿を現した。
話音剛落,突然湧出漆黑的海水,滔天巨浪中顯現出了海國鬼船的巨大身形。與此同時,浮現于空中的妖火向下墜入海水之中,劈開巨浪。水火相遇,浪花頓時化為水霧飄散在四周,遮蔽了衆人的視線。霧氣漸漸散去,鈴鹿禦前與酒吞童子出現在衆人面前。
【鈴鹿禦前】
「鬼船に直接鬼火を放つとは、大江山の主の挑発か?」
将妖火直接打在鬼船之上,可是大江山之主的挑釁?
【鬼王酒呑童子】
「はははは、そう怒るな。お前こそ、現れるたびに人が行き場を失うくらい大きな波を作るだろ。」
哈哈哈哈,別那麽緊張,誰叫你每次現身都弄得海浪滔天,讓人沒處落腳呢。
【鈴鹿禦前】
「ふん、鬼王がこれほどにひねくれた性格で、服を濡らすのも嫌がるとはな。」
呵,我倒不知道鬼王性格如此別扭,竟不肯沾濕衣褲。
人々を遮るように、天馬の大軍が羽を広げて天空を覆い、いななきながら現れた。二人の間に白い天馬がゆっくりと降り立ち、帝釈天は申し訳なさそうな顔で馬を降りた。
嘶鳴聲打斷了衆人,龐大的天馬軍隊出現在衆人上空,天馬的羽翼遮天蔽日。一匹潔白的天馬緩緩降落在二人之間,帝釋天一臉歉意地下了馬。
【帝釈天】
「晴明、酒呑童子、遅くなって申し訳ない。私はしばらく上空を旋回し、降り立つ地を探してた。この方は?」
晴明,酒吞童子,抱歉來遲了。我在上面盤旋了有一陣,遲遲找不到落腳的地方。這位是?
【鬼王酒呑童子】
「彼女は海國の……」
這位是海國的——
【鈴鹿禦前】
「自分で名乗る。我が名は鈴鹿禦前、海國の主だ。我が族の敵「ヤマタノロチ」を倒しに來た。我が鈴鹿山の一族を危険に曬す者に、容赦はしない。」
自報家門何須他人代勞。吾名鈴鹿禦前,是海國之主,為讨伐一族之仇敵八岐大蛇而來。若是有侵犯我鈴鹿山一族的,可不會手下留情。
【帝釈天】
「我が名は帝釈天、天界に住む天人の王だ。天人一族は一貫して争いを好まず、必ず恩に報いる。我が一族は晴明一行の恩を受けて魔神の亂を鎮圧した。都が大変なことになっている今、助けに來た。それで、今回の敵というのは、ヤマタノロチか?」
我名為帝釋天,是居住于天界的天人之王。天人一族向來不喜争端,有恩必報。我族曾受晴明一行的恩情平定了魔神之亂,此次京都有難,特意前來助力。這麽說來,這次的敵人就是八岐大蛇了?
【晴明】
「その通りだ。」
正是如此。
【帝釈天】
「天馬に乗って空から見ると、星が夜空を二つに分けていて、片方は夜、もう片方は晝になっていた。このような千年に一度の珍しい天象は、星群が空に降り注ぐ兆しだ。」
我自空中駕馭天馬,見群星将夜空一分為二,一半為黑夜,另一半則是白晝。這樣罕見的天象,千年難遇,正是群星墜天的征兆。
【鈴鹿禦前】
「災厄の予兆は、空だけではない。海と空が交わるところでは、太陽と月の倒影が同時に水面に現れ、その交點から不吉な赤になっていた。この赤い海水は、腐った水のように四方に広がっている。海底に染み込み、川に逆流するのも時間の問題だ。」
災禍之兆可不只是在天上。海天相接之處,日月的倒影同時出現在海水之中,海水自交接處化為不祥的紅色。此時也正如腐水一般朝四處蔓延,浸透到海底逆流入河水,也只是時間問題了。
【帝釈天】
「このような異象を起こすには、多くの霊力だけでなく、時間も必要だ。もしこれが全てヤマタノロチがやったことだとすると、彼は強力なだけでなく、狡猾で用心深いのだろう。」
造成這些異象不但需要耗費大量靈力,更是要花費不少時間。若這一切都是八岐大蛇所為,那他不僅力量強盛,更是狡猾又謹慎。
【晴明】
「ヤマタノロチは常に用心深く、また乾坤一擲の気迫を持っている。目的を果たすために、何千年もの時間をかけて準備する。皆をここに呼んだのは、皆がすでに関與しているのを察知したからだ。」
八岐大蛇向來行事謹慎,同時兼具乾坤一擲的魄力。為了達到目的不惜耗費千百年為之準備。我召集諸位前來,也是察覺到諸位已牽扯其中。
【鬼王酒呑童子】
「関與している?晴明、もしかして俺達が自分でも気づかずに、あいつを助けていたと言いたいのか?」
牽扯其中?晴明,你難道是想說我們不知不覺中竟是幫了那家夥一把嗎?
【晴明】
「ここにいる皆は、雲外鏡の欠片の浄化を手伝ってくれた。そのおかげで都が元に戻ったとはいえ、ヤマタノロチはそれを逆に利用して、己の計畫を実現しようとする可能性もある。」
在座諸位都曾幫助我淨化過雲外鏡的碎片。雖然此舉的确解除了對京都的污染,但以八岐大蛇一貫的行事方式,他很可能反向利用此事來達成自己的計劃。
【鬼王酒呑童子】
「何か根拠があるのか?」
此話可有根據?
晴明が黙っていると、黒晴明が突然扇子を叩いた。
晴明沉默不語,倒是黑晴明突然一拍折扇。
【黒晴明】
「それよりも、ヤマタノロチの隠れ家を見つけることが先決だ。」
當務之急,是要找到八岐大蛇的藏身之地。
【鬼王酒呑童子】
「それはもう目星がついている。ここに來る途中、現世と常世の境目を調べた。そこでは無數の蛇魔が裂け目に噛みつき、その裂け目を広げようとしていた。その辺りの鬼や妖怪は皆、意識を失い蛇魔となって同族を襲った。噛まれた者も蛇魔となり、こうして伝播していく。ヤマタノロチは、あの辺りにいるはずだ。」
這倒不用你們費心。我來時特意巡視了人鬼兩界交界之處,見到無數蛇魔圍繞着一處裂縫撕咬,使之不停擴大。而靠近這一帶的妖鬼皆失去了神智,化作蛇魔襲擊同族,被咬者同樣會堕為蛇魔,如此傳播。八岐大蛇,應該就在那附近了。
【小白】
「恐ろしいですね……!ヤマタノロチは、一體何を企んでいるのでしょう。」
聽起來好可怕!八岐大蛇,他到底是想做什麽啊。
【帝釈天】
「人世を滅ぼす程の、大災害を起こそうとしているのだろう。」
怎麽看都是要發起足以毀滅人世的災難。
【鈴鹿禦前】
「ならば星を直接落とし、人世を滅ぼした方が効果的ではないか?しかし、彼はまるで獲物を弄ぶかのように、殺さず、いためつけていた。彼の性格を考えると、特別な嗜好でないのであれば、もっと深い計畫があるのだろう。」
直接讓群星隕落,毀滅人世,豈不是更加有效。那人卻非要如同玩弄獵物一般,将獵物活生生折磨到現在,以他的性格,若不是有特殊的嗜好,就是有更深的計劃了。
【帝釈天】
「もしかして彼も、人世ではない場所に興味があるのか?(おかしいな、私はなぜ、彼「も」と言ったのだろう。)」
難道說,他也是對人世之外的地方有興趣?(奇怪,我為什麽要說「也」。)
【鬼王酒呑童子】
「彼は大江山の裏の鬼域にさえ興味がなさそうだ、天域などなおさらだろう。もし彼が捨てられない場所があるとすれば、それは……」
想來他也不像對大江山背後的鬼界有興趣,更遑論天域。要真是有哪個地方讓他割舍不下,那恐怕……
【燼天玉藻前】
「天命を掌握する、高天原。」
握天命的——高天原。
【晴明】
「その通り。」
沒錯。
【晴明】
「ヤマタノロチは、現世で高天原に対する審判を起こそうとしているのかもしれない。」
八岐大蛇或許是想在現世,發動一場對高天原的審判。
【???】
「その可能性もある。」
也未嘗不是一種可能呢。
【小白】
「この聲は荒様ですか?……それに、禦饌津様?」
這個聲音,是荒大人?……還有禦馔津大人?
【荒】
「源氏と藤原氏は、すでに兵士と武器を移動して門を守っている。陰陽師である君が共に行っているのかと思いきや、ここで客人と噂話をしているとは。」
源氏和藤原氏已将兵力人馬都調去防守城門。我以為你這個陰陽師也該跟着去了,沒想到卻在這裏待客閑談。
【晴明】
「最初は式神に対応を任せていた。今は、ヤマタノロチの倒し方を話し合うためにここにいる。」
我事先曾留下式神給他們代為應對,此時會客,是為了商議如何讨伐八岐大蛇。
【荒】
「ほう?そのような事態に迫られ、防戦ではなく、攻戦を望むか。勝算はあるのか?」
哦?面對如此局勢卻不想守而想攻嗎?你自以為能有幾分勝算?
【晴明】
「たしかに現段階では敵との間に戦力差があるだけでなく、敵の居場所も知らない。だか陰陽寮も準備を行っている。以前、禦三家は高天原と蛇神の関係を調べるため、陰陽師達を呼び寄せたことがあった。數千年前、ヤマタノロチが高天原の神獄に囚えられていた六つの罪を解放したことで、魔物が人世に災いを招いた。それ故、人間から七悪神と呼ばれたと言われている。人世を守るため、高天原と七悪神の軍勢との戦いが始まった。その戦いは長きに渡ったが、最後にはヤマタノロチを捕らえることができた。ヤマタノロチは神獄に閉じ込められ、その他の六の悪神は六道に封印された。高天原はヤマタノロチの審判を計畫した。審判場では、天照大神が蛇神を斷罪し、須佐之男が蛇神を処刑し、彼の神格を滅ぼし、灰と消えるものとされていた。しかし、その審判で一大事が起こった。その審判について、世間にはほとんど知られていない。ただ完全に抹殺されたはずの蛇神がやがて狹間に封印され、高天原の半分が空から落ち、行方不明であることだけは分かっている。それ以來、元々人間を庇護していた高天原も、人世との接觸が少なくなってしまった。そして、その審判で実際に何が起こったかについては、さらに様々な意見がある。おそらく、三貴子の天照大神、月読、そして蛇神を殺すはずだった須佐之男だけが真実を知っているのだろう。三人の中に裏切り者がいると言う者もいれば、裏切り者は須佐之男にほかならないと言う者もいる。今日は荒様も禦饌津もいる、二人の知っていることを教えてくれないか?真実の中にこそ、この戦いの勝利の鍵があるかもしれない。」
确實此時敵我不僅實力懸殊,而且敵暗我明,但陰陽寮也并非毫無準備。先前,三大家族曾召集陰陽師們,共同調查高天原與蛇神之間的淵源。據傳數千年前,八岐大蛇将關押在高天原神獄中的六個罪行放到了人間,使妖魔滋生災禍橫行,因此被人類合稱為七惡神。為保護人世,高天原與七惡神之軍展開了一場大戰,戰事曠日持久,最終将八岐大蛇擒獲。八岐大蛇被關押于神獄,而另外六惡神被封印于六道之中。高天原計劃審判八岐大蛇。在審判場上,本應由天照大神對蛇神判罪,須佐之男對蛇神處刑,摧毀其神格,令其灰飛煙滅。然而審判卻出現了意外。關于這場審判的經過,世人所知甚少。唯一得知的,就是本該被徹底誅滅的蛇神,最終卻被封印在狹間,高天原的一半從天隕落,去向不得而知。此後,原本庇護人類的高天原也和人世少有往來。而當年審判上到底發生了什麽,更是衆說紛纭。也許,只有身為三貴子的天照大神、月讀和本該誅滅蛇神的須佐之男知曉真相。有人說,必是三人中出了叛徒,還有人說,叛徒非須佐之男莫屬。今日既然荒大人與禦馔津都在,可否将二人所知的真相說出?興許真相中,就隐藏着這一戰的勝機。
【禦饌津】
「それは……実は……」
這……其實……
【荒】
「人間は天命を推測すべきではない。噂を気にする必要はない。いずれ真実を知る時が來るだろう。」
天命豈容凡人揣測。你們無需在意謠傳,時機一到自會知道真相。
【小白】
「荒様は本當に頑固ですね……いずれにせよ、ヤマタノロチの目的の一つは、高天原への復讐のようですね!昔、高天原はヤマタノロチを倒したのですから、きっと策があるのでしょう。」
荒大人還真是頑固呢……不管如何,聽起來八岐大蛇的目的之一就是對高天原複仇呢!既然曾經的高天原能擊敗八岐大蛇,那自然是有對策才對。
【晴明】
「蛇神を倒す神器天羽々斬も、蛇神と共に人世に落ちてきた。しかし、この神器を使える者は限られている。仮に封印を解くことができたとしても、それを使える者がいないかもしれない。」
能擊敗蛇神的神器天羽羽斬,也随蛇神一并落入了人世。但能使用這把神器的人十分有限,即使能夠解開封印,恐怕也找不出能夠拔出它的人。
【荒】
「それはどうかな。」
那倒不一定。
【小白】
「え!?」
咦?!
みんなが荒に目を遣ったが、荒は口をつぐんだ。禦饌津は慌てて、荒の前で仲裁した。
衆人看向荒,然而荒卻不再說話。禦馔津急忙走到荒的前面打圓場。
【禦饌津】
「つまり、邪神を止めるには、皆で力を合わせて儀式を中斷するのが一番確実な方法なの。儀式を中斷する方法は二つしかない。一つは儀式を行う陣眼を抑え、無理やり閉じること。もう一つは儀式を行う者、つまり蛇神を倒すこと。でも、蛇神を攻撃するのは今のところ得策じゃない。陣眼を破壊する方法を検討した方がいいと思う。晴明様はどう思う?」
總而言之要阻止邪神,最穩妥的方法就是大家齊心協力,一起來打斷他的儀式。打斷儀式的方法無外乎兩種,其一是壓制啓動儀式的陣眼,強行關閉儀式。其二則是擊敗開啓儀式的人,也就是蛇神本人。但此時攻擊蛇神并非良策,果然還是從破壞陣眼的方向開始考慮為妙?不知晴明大人意下如何?
【晴明】
「陣眼の位置はすでに調べてある。」
陣眼的位置,早已調查清楚了。
【荒】
「ほう。」
哦。
【晴明】
「しかし、ヤマタノロチのような狡猾な相手には、策略が一つしかなければ必ず見破られてしまう。そこで今回は複數の策で蛇神を倒そうと思い、皆をここに集めて協議してもらった。」
但要應對八岐大蛇這般狡猾的對手,只用一種計策,一定會被他看穿。因此我此次特意請諸位來商議,就是想要和諸位一起,以多重計劃擊敗蛇神。
【禦饌津】
「複數の策?」
多重計劃?
【晴明】
「ヤマタノロチが発動した陣眼は六つあり、おそらくそれぞれが各天羽々斬と関係している。陣眼の付近では、ヤマタノロチが萬全の準備を整え、罠や蛇魔を配置して、我々が來るのを待ち構えているだろう。恐らく陣眼を攻め落としても、儀式を止めることはできない。その力を弱化させ、儀式を遅らせることしかできないだろう。そこでだ。禦饌津、玉藻前、酒呑童子、鈴鹿禦前、帝釈天、そして黒晴明……皆が各隊を率いて、六つの陣眼をそれぞれ攻め落としてくれ。これが一つ目の計畫、「目くらまし」だ。」
八岐大蛇所發動的陣眼一共有六處,或許是每處都對應着一把天羽羽斬。在陣眼附近,八岐大蛇想必做了萬全的準備,放置了陷阱和蛇魔等着我們前往。而攻克陣眼恐怕未必能阻止儀式,只能削弱陣眼的力量,延緩儀式的開啓。因此,我希望能由禦馔津大人、玉藻前大人、酒吞童子大人、鈴鹿禦前大人與帝釋天大人,以及黑晴明……諸位各自率領一隊人馬,分別前去攻克六處陣眼。此為第一重計劃,也就是障眼法。
【鈴鹿禦前】
「目くらまし?つまり……」
障眼法?你的意思是……
【晴明】
「そうだ。二つ目の計畫こそが私の本當の目的……ヤマタノロチに奇襲をかける。」
沒錯,而第二重計劃,才是我真正的目的——出其不意,襲擊八岐大蛇本人。
【帝釈天】
「まさか、あなた自ら蛇神に奇襲をかけるつもりか?」
你難道是打算親自去突襲這位蛇神嗎?
【晴明】
「その通りだ。しかしそれだけではない。禦饌津が我々數人の幻影を連れて陣眼へ行き、全力で攻撃しているように敵に錯覚させる。」
正是。但不僅如此,我希望禦馔津大人能帶領我們幾人的幻影前往陣眼,制造出我們正全力攻克陣眼的假象。
【荒】
「では、君も一人で行くつもりではないのか?」
這麽說你也并非是打算孤身前往了?
【晴明】
「草薙剣を持つ荒にも、共に來てほしい。」
我希望持有草薙劍的荒大人,能夠與我一同前往。
【荒】
「我々二人だけか?」
就我們兩個?
【晴明】
「もう一人いる。」
還有一人。
【神楽】
「私も行く。」
是我。
【源博雅】
「だめだ!神楽が一緒に行く?そんなこと、俺が許さない!」
我不同意!我不同意神樂跟你們一起去!
【神楽】
「でもお兄ちゃん、私、前から晴明と約束してたの。」
哥哥,可是我事先,就已經答應了晴明的。
【源博雅】
「そんな大事なことを、どうして今までずっと黙っていた!」
為什麽這麽重要的事情到現在才跟我說啊!
【神楽】
「お兄ちゃんは反対するって分かってたから……この作戦には、ヤマタノロチに重傷を負わせたことのある、私の霊力が必要なの。」
就是因為知道博雅哥哥會這樣……我的靈力曾經重傷過八岐大蛇,對這次行動來說是必不可少的。
【源博雅】
「せめて俺も一緒に……」
至少也讓我跟着一起——
【晴明】
「三體以上の幻影は、ヤマタノロチに気づかれる可能性が高くなる。」
幻影超過三人容易被八岐大蛇發現。
【源博雅】
「なら、俺が代わりに行く!」
那你別去我去!
【荒】
「では誰が幻術を使う?」
那誰來用幻術投影呢。
【源博雅】
「お前が……」
那你——
【神楽】
「荒様は草薙剣を持ってるから、できない。」
荒大人有草薙劍,是無可替代的。
【源博雅】
「お前ら……!!!」
你們——!!!
【晴明】
「博雅、約束する。必ず神楽を守り、無事に君の元へ返す。」
博雅,我向你保證,一定會保護神樂的安全,把她完好無缺地帶回你身邊。
【源博雅】
「だが……」
可是——
【荒】
「私の月鏡があれば、神楽と連絡を取ることもできる。」
有我的月鏡在,若你想與神樂取得聯系,也并非難事。
【源博雅】
「お前……!!」
你這——!!
【禦饌津】
「どうしても不安なら、私を人質にして。その代わり、荒様は必ず神楽さんを連れて帰ってくるから。」
博雅大人如果實在不放心的話,可以把我當作人質,這樣荒大人必然要拿神樂小姐回來交換的。
【源博雅】
「誰がお前を人質にするか!それだと神楽があっちの人質になるだろ!ちっ、腹が立つぜ、お前ら!分かった!俺もできるだけ神楽と一緒にいるふりをする。神楽を無事に連れて帰れよ!」
誰要你當人質啊!這樣神樂不就成了那邊的人質了嗎!啊,氣死我了,你們這群家夥!我知道了,我知道了!我會盡量裝作跟神樂在一起的樣子,但你們一定要把她給我安全送回來!
【鈴鹿禦前】
「ははははは、今まで気づかなかったが、あなたの周りにいる者達はなかなか面白いな。」
哈哈哈哈哈,之前沒有發現,你身邊的這群家夥還都挺有意思的。
【八百比丘尼】
「どなたかと同じで、素敵で時々面倒な家族ですね。」
和某人一樣,都有着可愛又令人有些頭痛的家人呢。
【鈴鹿禦前】
「あなたが何を言おうと、もう簡単に挑発されたりはしない。今回の目的は、汚された鈴鹿山と、亡くなった海國の民の敵を討つことだ。あの蛇神の首を取るまで、休むわけにはいかない。」
就算你作弄人手段高超,我也不會再輕易被挑釁了。此行的目的是為被污染的鈴鹿山和葬身的海國子民們報仇,不拿到那蛇神的首級,我是不會罷休的。
【八百比丘尼】
「なるほど。ではこちらの鬼王さんは、どうお考えですか?」
原來如此,不知這邊的鬼王大人又意下如何?
【鬼王酒呑童子】
「鬼道の信條は自由であることだ。蛇魔に汚された鬼族が自由を失った傀儡と化した末に、いくら戦ったとしても敬意を得ることはできない。彼らもあのヤマタノロチに復讐したいだろう。鬼王として、彼らの期待を裏切ることはできねえ。」
鬼道的信條原就是無拘無束,被蛇魔污染的鬼族卻淪為沒有自由的傀儡,再怎麽争強鬥勝,也無法收獲敬畏。他們想來也想要向那八岐大蛇報仇吧,身為鬼王,我又怎麽能辜負他們的心意。
【帝釈天】
「蛇神、鬼族、鈴鹿山……(何とも言えない懐かしい感じがする。まだ気づかぬうちから、その中にいたような気さえする。隠された意図を調べる必要がありそうだ。)」
蛇神,鬼族,鈴鹿山……(這一切說不出的熟悉,似乎在我所不知道的時候,就早已置身其中。看來還需調查這之中的隐情。)
各々の出発時間を決め、中庭には晴明と神楽だけが殘った。
衆人約定好整兵出發的時間後,院中只剩下了晴明和神樂二人。
【晴明】
「荒は何か隠しているようだ。ヤマタノロチの目的は高天原だと認めたが、全てを明かしはしなかった。高天原の使者であるにも関わらず、ヤマタノロチのもたらした危機に対して、全力を出していなかった。この前も雪域で、天羽々斬を調べに來ていたのに、封印が解けるかどうかは気にしていなかった。全て、辻褄が合わない。」
荒似乎有所隐瞞。明明已經承認了八岐大蛇的目的是高天原,卻不肯和盤托出。他身為高天原的使者,對八岐大蛇制造的危機,一直卻保留實力在行動。先前在雪域,他分明是來調查天羽羽斬,但又為何不管封印松動一事。這一切都超出了常理。
【神楽】
「晴明は、荒様に何か問題があると思ってる?」
晴明是覺得,荒大人有問題嗎?
【晴明】
「……今回は、彼の態度を観察してみようと思う。それで高天原の狀況が明らかになるかもしれない。」
……這次的行動,我也想觀察他的态度。這樣或許便能弄清高天原的情況。
人界と妖界が交わる黒夜山と大江山の境目では、陰界の裂け目から蛇魔が続々と出てきている。黒鏡には、陰の気に侵された様々な慘狀が映し出されている。それを見るロチは、まるで美しい景色を見ているかのように微笑んでいた。
黑夜山與大江山的交界之處,人鬼兩界交彙之地,陰界的裂縫中源源不斷地湧出蛇魔。黑鏡之中,呈現出被陰氣所侵蝕的種種慘狀。八岐大蛇觀察着這一切,如同在欣賞不可多得的美景一般露出笑容。
【ロチ】
「晴明、可愛い子羊。もう深淵の罠にかかっていることに気づいていない。ふふふ、未熟だった果実も熟したな。あとはその甘さを味わうだけだ。」
晴明,可愛的羔羊啊,竟殊不知自己已步入了深淵陷阱。呵呵呵,曾經青澀的果實已變得成熟飽滿,只待我去品嘗它的甘甜了。