第58章 ⑦雪風
終焉之章 ⑦雪風
……都の近辺、進軍の途中。
京都外圍,行軍途中。
【大天狗】
「黒晴明様、此度は危険極まりない旅になります。蛇魔も増える一方です。それなのに、なぜこの鬼女を助け、そばに置くのですか?」
黑晴明大人,這一路上危機四伏,蛇魔的數量有增無減。為什麽你還要将這鬼女救下,甚至帶在身邊?
【黒晴明】
「ヤマタノロチは都付近に陣眼を設置し、各地の平和を壊した。紅葉林の中の封印は弱まり、瘴気が立ち込めていた。もしあの時助けなかったら、彼女も侵食され、より恐ろしい怪物になってしまったかもしれない。」
八岐大蛇在京都外圍布下陣點,攪得各地不得安寧。紅葉林中封印松動,瘴氣密布,若我此時不伸出援手,恐怕她亦會被侵蝕污染,暴走為更可怕的怪物。
【大天狗】
「しかし、黒晴明様……紅葉さんは全く有難がっていないようですが。」
但,黑晴明大人……這位紅葉小姐似乎并不領情。
大天狗の目線を辿ると、その先には赤い服を着た美しい女性がいた。しかし彼女はとても恐ろしい形相をしている。
順着大天狗的目光看去,不遠處正站着一名身姿曼妙的紅衣女子,但她的臉上卻流露出陰森可怖的表情。
【蟬氷雪女】
「とても恨まれているようですね、黒晴明様。」
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感覺她的怨氣可不小呢,黑晴明大人。
【黒晴明】
「紅葉、今は特殊な事態だから、一先ずそばにいてもらう。」
紅葉,此時情況特殊,就先讓你跟在我們身邊了。
【鬼女紅葉】
「うふふふ……めずらしく親切ですね、黒晴明様。」
呵呵呵呵……這可是不可多得的親昵時刻呀,黑晴明大人。
そう言いながら、紅葉は奇妙な舞を踴って近寄ってきた。しかし黒晴明に觸れる寸前、彼女は霊力によって拘束され、危うく躓いてしまうところだった。
紅葉說着便邁着詭異的舞步靠了上來,然而就在她接近黑晴明的瞬間,一股靈力流過,将她約束在原地,險些讓她打了個踉跄。
【鬼女紅葉】
「黒晴明様……以前、私の美貌を求める気持ちを利用して、悪事に手を染めるよう唆してくれたわね。それを素直に聞いた私は、許し難い罪を犯した……ご存知かしら……封印されていた間……愛しい二人の晴明様は……私のなど完全に忘れてしまったみたい……幸い下僕達が私に晴明様達の狀況を知らせてくれたわ。でもあのあまりにも長く寂しい日々……人間に耐えられるものじゃない……この全てを引き起こした張本人がお前だと考えるたびに……私はうらめしくて……うらめしくてお前を食い殺したくなる……!今、術を使って私をあなたのそばに置きたがるということは……もう思い直して……私のものになると決意してくれたの?」
黑晴明大人……從前你利用我想變美的心而引誘我做了惡事,我聽信了,犯下了不可饒恕的罪……你知道嗎……被封印的這些日子裏……我所鐘愛的兩位晴明大人……就像完全将我遺忘了一般……好在侍從會為我帶來一些你們的消息,可那份漫長的孤寂真是令人無法忍受啊……一想到這一切的起源,就是因為你這家夥……我就恨不得……恨不得将你整個吞噬……!現今你給我施咒,将我束縛在你身邊,是不是……已經回心轉意……決心歸屬于我了?
【黒晴明】
「すまない、紅葉。封印が破られたのは予想外だった。私の半身はまだこのことを知らない。このまま紅葉に自由を與えるのは、得策ではないだろう。」
抱歉,紅葉。畢竟這封印被破是一場意外,我那半身對此還一無所知。若是讓你就此恢複自由之身,恐怕不太合适。
【鬼女紅葉】
「ふふふふ……以前私を「誘惑」した時、黒晴明様は今ほど素直じゃなかったわ……いいわ、もう一人の晴明様を見つけた時、あなた達二人と……きっちり「けりをつける」から……」
呵呵呵呵……以前你「誘惑」我的時候可不像今天這般正直……也罷,等我找到了那位晴明大人,定要同你們兩個……将這些賬好好「清算」一番……
言ったそばから、寒気と風刃が彼女を襲った。しかし彼女に觸れる寸前、黒晴明が扇子を振りそれを打ち消した。
紅葉話音剛落,一股寒氣伴随着一道風刃向她直沖而來,但在觸碰到她的前一刻,黑晴明輕揮折扇将其化解。
【蟬氷雪女】
「黒晴明様への無禮は許さない!」
不許你對黑晴明大人如此無禮!
【鬼女紅葉】
「ふふふ……あなたこそ、私と愛しい人との會話に口を挾まないでくれる?それに、あなた達の黒晴明様は封印が弱まった途端に、隙をついて私を攫ったのよ……この名ばかりの「保護」の裏には、一體どんな企みが隠されているのかしらね。」
呵呵呵……我同我的心上人說話,又哪裏容許你們這些家夥插嘴!再說了,你們的黑晴明大人趁着封印松動就趁虛而入将我擄走……這種名義上的「保護」,實際上還不知道算計着什麽壞心思呢。
【大天狗】
「この女は完全に狂っているようだ……體中から不愉快な気配を放っている。(これから本當に彼女と仲間になるのか……)」
看起來真是個瘋狂的女人……散發着令人不悅的氣息。(接下來真的要和她成為同伴嗎……)
【蟬氷雪女】
「私もとても耐えられないけれど、黒晴明様がお決めになったことだから。あなたも私もただ従えばいい。ここで少し休んでから、急いで目的地に向かいましょう。」
雖然我也無法忍受這家夥,但畢竟是黑晴明大人的決定。你我都只需服從便是。我們在此稍作休憩,便盡快向着目的地出發吧。
【大天狗】
「ふん、おそらくそんなに簡単ではないだろう。」
哼,恐怕沒那麽簡單。
大天狗が風刃を放つと、陰に隠れて攻撃の機會を伺っていた蛇魔が忽ち遠くに吹き飛ばされた。同時に結界の周りに、危険な気配を放つ漆黒の何かが巻き散らされた。
大天狗随手揮出一道風刃,一條隐藏在暗處将要發起攻擊的蛇魔被擊飛數十步距離,漆黑之物傾灑在結界外圍,透出危險的氣息。
【大天狗】
「ここで止まっている間に、彷徨う蛇魔達に目をつけられた。一網打盡にできるから手間が省けたとも言えるが、かつて住んでいた場所にこいつらが集っているのは、やはり……気に食わない!」
就在我們停下的這段時間裏,已經被很多游離的蛇魔盯上了。雖說将它們聚集起來一網打盡也算省事,但看到這麽多家夥聚集在我生活過的地方,還是頗有些——令人不爽!
林に突然刃羽の嵐が出現し、あっという間に道沿いの無數の蛇魔と悪鬼を倒した。
羽刃暴風猛地從山林中心升起,一時間擊倒了沿路無數蛇魔與惡鬼。
【黒晴明】
「実に見事な一撃だ、大天狗。」
真是漂亮的一擊,大天狗。
【大天狗】
「……お褒めに預かり恐縮です。黒晴明様をお守りするためなら、我は……」
……雕蟲小技。只要是保護黑晴明大人,我定……
二人が話していると、周囲は一気に冷え込んだ。草花はたちまち氷に覆われ、悪鬼の悲鳴が聞こえてきた。
兩人正說着,只覺身邊氣溫驟降,一時間草木花葉悉數凝上薄霜,不遠處傳來惡鬼痛苦的嚎叫。
【黒晴明】
「さすがは氷雪の力を操る雪……雪……雪女……」
不愧是操縱冰雪之力的雪……雪……雪女……
【蟬氷雪女】
「この先しばらくは私達の脅威となる障害は現れません。行きましょう。」
前方的障礙應該暫時不會對我們造成威脅了。出發吧。
【大天狗】
「……(つい我慢できずに身震いした)」
……終于忍不住打了個寒戰)
一行は再び目的地に向かって移動を始めた。道中で襲ってくる悪鬼と蛇魔を片付けていく。
衆人繼續向着目的地前進,一路上清理着襲來的惡鬼與蛇魔。
【逃難的村民】
「助けて……助けて……」
救救我—救—
【腿腳不便的老人】
「この世の終わりのようじゃ……」
還有什麽時候比現在更像末日降臨呢……
村人達の叫びがすぐに妖怪の咆哮に埋もれていく。それを見た黒晴明は素早く前に出て、霊力を使って村人達を守った。
村民們的呼喊并未持續多久,很快被淹沒在妖怪的嘶吼聲中,黑晴明見狀迅速上前,以靈力保護着他們。
【大天狗】
「黒晴明様、この辺りの瘴気は以前よりも濃くなっています。先に結界を張ってから対策を考えましょう。」
黑晴明大人,這附近的瘴氣比先前濃重太多,不如先張開結界再作決斷吧。
【黒晴明】
「よかろう。」
好。
黒晴明が呪文を唱えると、彼を中心に強固な結界が出現し、瘴気を外に追いやった。
黑晴明默念口訣,一道堅固的結界以他為原點張開,将瘴氣隔絕在外。
【逃難的村民】
「た、助かった……ありがとうございます、陰陽師様!え?都の有名な陰陽師様に似ていらっしゃいますが……あ、思い出した。晴明様……晴明様ですよね?さっきは混亂していて、晴明様のお顔も汚れていたので、すぐに気づけませんでした。晴明様がいてくださるのなら、もう安心です。」
得,得救了——多謝陰陽師大人!诶?您似乎與京都一位出名的陰陽師大人長相神似……啊,我記起來了,您是——晴明大人吧?剛剛事态混亂,您臉上又沾染了髒污,這才沒有認出來。既然有晴明大人在此,那我們也便安心了。
【大天狗】
「……」
【蟬氷雪女】
「ゴホッ……」
咳……
【大天狗】
「雪女、どうした?気分でも悪いか?」
雪女,你怎麽了,是感覺不太舒服嗎?
【蟬氷雪女】
「へ……平気。でも、道中ずっと何かの力がついてきているような気がする。」
我……沒事。但這一路上,我總覺得有股陌生的力量跟在身邊。
【黒晴明】
「ああ、雪女の言う通りだ。私も似たようなものを感じた。だが、私にとってその力は少し懐かしいものだ。その術を発動した者は我々のすぐ近くにいながら、何かを企んでいるのだろう。」
嗯,雪女說得不錯,我也有相似的感覺。但我對這氣息倒是有幾分熟悉,想來施術者在我們身邊,卻有着自己的小心思吧。
【藤原道綱】
「黒晴明様はやはり鋭いですね。どうやらとっくに見抜かれていたようです。」
黑晴明大人可真是敏銳,看來我早就被識破了呢。
【黒晴明】
「この術は途中の情報を集めるためのものだ。例えこの世の終わりを迎えても、道綱様はまだ己の職務を気に掛けているようだな。」
這術法是為記錄沿途的情報而設。看來即使是末日之時,道綱大人也還是對自己的本職念念不忘。
【藤原道綱】
「いえいえ。あくまでも日頃の癖です。もし皆さんの気に障るようでしたら、すぐに術をやめます。」
黑晴明大人過獎了。這不過是出于日常的習慣。若是讓諸位感到不适,我收了這法術便是。
【黒晴明】
「その必要はない。蛇神を相手取るには、情報が多いほど有利だ。かつて住んでいた、よく知っている場所でも、今も昔と変わっていない保証はどこにもない。」
那倒不必。對付蛇神,我們了解到的情報越多則越有利。即使是曾經生活過的熟悉之地,如今也不能保證就一定與從前無異。
【藤原道綱】
「ははは、黒晴明様はやはり考え方が周到ですね。」
哈哈哈,黑晴明大人果真深謀遠慮。
【黒晴明】
「道綱様ほど用心深くはない。」
還是道綱大人心思更為缜密。
【蟬氷雪女】
「……黒晴明様はどうしてあの男と意気投合しているのでしょう……」
……黑晴明大人怎麽和他聊得愈發投機了……
【大天狗】
「ん?そうか?むしろ雰囲気が悪化しているように見えるが。」
诶?有嗎。我怎麽覺得氣氛開始不對了起來。
その時、ほぼ聞き取れないほど小さな音が聞こえた。
恰在此刻,一聲幾不可聞的異響傳來。
【黒晴明】
「こんな時に結界に異変か?いつの間に……」
結界在此時出現了異動?那處什麽時候被……
【大天狗】
「黒晴明様、危ない!」
黑晴明大人,小心!
大天狗の聲で黒晴明は現実に引き戻された。目の前を風刃が通り過ぎ、攻撃を仕掛けてきた蛇魔を吹き飛ばした。その時、一行の足元の大地がひび割れ、各所に隠れていた悪鬼達は一目散に逃げ出した。
大天狗的聲音拉回了黑晴明的思緒,一道風刃掠過他眼前,一條蓄勢進攻的蛇魔被擊飛了出去。與此同時,衆人腳下的土地開始顫動崩裂,藏匿在各處的惡鬼四散而逃。
【天邪鬼赤】
「逃げろ、逃げろ!!助けて!!」
快逃,快逃——救命——
【天邪鬼青】
「待て!!一緒に……!!」
等等我——我們一起——
【天邪鬼黃】
「皆を守りたい……けど!!」
我也想保護大家,可是——
天邪鬼達の言葉が終わる前に、周囲は突然暗闇に包まれた。聲でしか仲間の居場所を知ることができない。暗闇の中、赤い目がゆっくりと開き、高い場所から彼らを見下ろす。
天邪鬼們的話音未落,四周突然變得一片漆黑,大家僅能憑借聲音分辨各人所在的方位。黑暗之中,一只猩紅的眼瞳緩緩睜開,居高臨下地看向他們所在的方向。
【大天狗】
「この地に配置された蛇魔だ!な……天邪鬼達が……」
是駐守在此地的蛇魔!什麽……天邪鬼他們……
【藤原道綱】
「彼らは弱いから、蛇目に睨まれると一時的に生命力を奪われ、石像のようになってしまいます。早くこの蛇魔を始末しないと、この辺りの命は全てあいつに力を吸収されてしまいます。」
他們力量低微,被蛇瞳凝視之後便暫時被奪走了生命力,化為了類似石像般的存在。若我們不盡快解決這條攔路的蛇魔,恐怕周遭所有的生靈都會被它汲取力量。
【大天狗】
「ならば、一気に始末してみせる!」
那便一鼓作氣,幹掉它們吧!
【黒晴明】
「大天狗、早まるな。この蛇魔の凝視はとても強い邪力を帯びている。もし目が合えば、おそらくすぐに逃げきれなかった天邪鬼達のような狀態になるだろう。」
大天狗,不要貿然戰鬥。這條蛇魔的凝視帶有極強的邪性,若是目光與它直接接觸,恐怕很快就會變得和那些沒來得及逃走的天邪鬼們一樣。
【大天狗】
「そんな。」
什麽?
【黒晴明】
「私の霊力を帯びた帯で目を隠せば、しばらくはもつはずだ。ヤマタノロチは何を企んでいるか分からない。彼が放った蛇魔には、きっと我々の知らない秘密がまだたくさん隠されているだろう。しかと心に留めておけ。何が起きても目を合わせてはいけない……」
以帶有我靈力的綢帶蒙住雙眼,應該能夠支撐一段時間。八岐大蛇心機頗重,他所放出的蛇魔,一定還有許多我們所不知曉的秘密。切記,不論發生什麽都不要與這家夥有直接的目光接觸……
【大天狗】
「はい、黒晴明様。」
是,黑晴明大人。
【黒晴明】
「皆、ここは各自の得意分野に応じて、戦いでの役割を決めておこう。」
諸位,我們依照各自所長,簡單分配一下作戰的方式吧。
【大天狗】
「我は風を通じて皆の動向を感知できる。上空の戦況は我に任せろ。」
我憑借風聲就能夠辨別各方的動向,就由我來控制上方的戰局。
【蟬氷雪女】
「私は溫度から方向を知ることができる。地上の皆を補佐するわ。」
我感知溫度就能辨別方位,所以就為地面上的各位提供幫助。
【藤原道綱】
「目を隠したら、私は方向が分からなくなります。でも黒晴明様と協力して結界を維持することはできます。」
蒙住眼睛後,我很難辨別方向,但協助黑晴明大人繼續維持這個結界還是綽綽有餘。
【黒晴明】
「よし。これは壯絶な戦いになる。皆、頼んだぞ!私と道綱様は引き続き結界を維持し、蛇魔の邪気の侵食から皆を守る。同時に皆と共にやつを討伐する!」
好,這一戰來勢兇猛,便拜托大家了!我與道綱大人繼續維持庇護結界,确保大家不被蛇魔的邪氣侵蝕,并與諸位合力将它擊倒!
【鬼女紅葉】
「……」
【黒晴明】
「紅葉、まだ何か用か?」
紅葉,還有什麽事嗎?
【鬼女紅葉】
「あなたのことは誰にも渡さない……だから……私もあなたを守るわ。」
我可不會讓你落到他人手中……所以……我也會保護你的。
【黒晴明】
「そういうことか……ありがとう。」
既然如此……多謝。
【鬼女紅葉】
「でも覚えておいて……これは全て、あなたの體を、魂を獨占するため……決して優しさなんかじゃない……」
但請記住……這一切都是為了我能夠獨占你的身體……你的靈魂……而非是我的好心……
【大天狗】
「善は急げだ。すぐに決着をつけましょう、黒晴明様!」
事不宜遲,速戰速決吧,黑晴明大人!
黒晴明一行が蛇魔に総攻撃を仕掛ける。皆それぞれ大技を決めたが、どれだけ強烈な攻撃を浴びても、巨大な體を持つ蛇魔にとっては痛くも癢くもない。
黑晴明一行人與蛇魔纏鬥起來,一開始各方攻擊勢頭正猛,然而衆人強勢的攻擊對于身形龐大的巨蛇而言不值一提。
【大天狗】
「刃羽の……くそ!」
羽刃暴……可惡!
上空にいた大天狗は一番に攻撃された。蛇魔の體に生えている棘が放たれ、大天狗の翼を掠めて飛んで行った。しかし急に走った激痛のせいで彼は均衡を失い、そのまま一直線に落下した。幸い、黒晴明がすぐさま呪符を放ち、彼を危機から救った。
位于上空的大天狗最先受到襲擊,蛇魔身體上的飛刺擦過了他的羽翼,突如其來的劇痛令他失去平衡,從空中直直下落。幸而黑晴明及時抛出符咒将他護住,解除了他的危機。
【黒晴明】
「大丈夫か、大天狗。」
可要打起精神來,大天狗。
【大天狗】
「黒晴明様……」
黑晴明大人……
視界が制限されているため、なかなか弱點を見つけられず、すぐに巨蛇に有利な狀況になった。このままではいけないと誰もが悟ったが、限られた時間の中で、誰も戦況を逆転する方法を見つけられなかった。
視線受到限制,巨蛇的弱點也極難被察覺,很快巨蛇便占據了上風。雖然大家皆心知肚明這樣下去絕非長久之計,但一時間竟也難以想出能夠逆轉戰局的方法。
【蟬氷雪女】
「ふふ……ふふふ……消えなさい……皆消えなさい……!!!」
呵呵呵……呵呵呵……消散吧……都給我消散吧……!!!
【大天狗】
「雪女……なぜ急に……」
雪女……你怎麽突然……
【藤原道綱】
「まずい、どうやら雪女様はもうこれ以上巨蛇の侵食に耐えられないようです……」
糟糕,看來雪女大人是在巨蛇的影響下有些支撐着不住了……
【大天狗】
「そんな。」
什麽?
【黒晴明】
「蛇魔と目が合わなくても、冷靜さを失えば、邪神の力に影響される恐れがある……結界の力も、じきに盡きてしまいそうだ。視界を奪われた今、全力を出すことができない。まずは巨蛇の目を何とかしなければ、有効な攻撃は期待できない。」
就算不與蛇魔對視,若是內心失去平靜,還是有可能被邪神之力影響心智……看來結界的保護之力已經所剩無幾了。現在我們視野受到限制,無法發揮全力,看來唯有從巨蛇之眼入手,從此處擊破,才有可能達到奇效。
【大天狗】
「黒晴明様、ここは我が……」
黑晴明大人,就讓我……
【黒晴明】
「焦るな。道綱様、雪女は頼んだ。」
先不要心急。道綱大人,先拜托你照顧好雪女了。
【藤原道綱】
「ご安心ください、戦闘の支援は困難ですが、誰かを守ることはできます。」
沒問題,雖說戰鬥我難以幫忙,但簡單的保護不在話下。
【蟬氷雪女】
「近寄らないで……近寄らないで!」
不要靠近——不要靠近我!
【鬼女紅葉】
「ちっ、見苦しいわ、彼女には一體何が見えているのかしら……」
啧,這副模樣,真不知道她看見了什麽啊……
【藤原道綱】
「紅葉さんはまだまだ正気のようですね。」
紅葉小姐的神智看起來還很清醒嘛。
【鬼女紅葉】
「ふふ、この件を片付けたら愛しいあの人を獨占できると思うと、胸がいっぱいになるの……私を止められるものは何もない……」
呵呵,我一心念着解決完這件事,獨享我的心上人……可沒有什麽能夠阻攔我……
【黒晴明】
「本題に戻って。大天狗、この後上空で巨蛇の注意を引きつけてくれ。その隙に私が霊力を込めた呪符をやつの目の中に放つ。」
言歸正傳。大天狗,待會就由你來從上方吸引巨蛇的注意,之後由我将帶有靈力的符咒送入它的眼中。
【大天狗】
「禦意、黒晴明様。」
領命,黑晴明大人。
【黒晴明】
「くれぐれも無理はするな。異変があれば直ちに地上に戻れ、分かったか?」
切記不要逞強,若是有什麽異樣立刻返回地面,聽見了嗎?
【大天狗】
「……はい。」
……是。
少し休んだ後、大天狗は空へと飛び立った。獲物の気配に気づいた巨蛇は、彼に気を取られている。その時、黒晴明が高く飛び上がり、空中で止まった。そして手に持った呪符に霊力を注ぎ込む。
經過簡單的休整後,大天狗率先飛上了天空,巨蛇嗅到獵物的氣息,果不其然被其吸引而去。就在此刻,黑晴明一躍而起,亦随之懸于空中,手持符咒,凝神聚力。
【大天狗】
「黒晴明様!今だ!」
黑晴明大人!就是現在!
しかし敵の急所に打撃を與える直前に、一行が気づかないうちに後ろに潛伏していたもう一匹の巨蛇が現れた。背後から強烈な威圧を感じ、すぐに一行は程度こそ違うが、皆幻覚に襲われた。悲鳴、風音、號泣が耳元で響き、彼らを押し潰そうとしているかのようだ。
然而就在感覺這一擊将要擊中要害之時,幾人都未注意到身後蟄伏的另一條巨蛇。強烈的壓迫感瞬時從後方傳來,一時間衆人眼前都出現了不同程度的幻覺。尖叫聲,風聲,哀嚎聲充斥在耳畔,仿佛要将他們逐個擊潰。
【黒晴明】
「気をそらすな、大天狗!」
不要分神,大天狗!
途切れ途切れの黒晴明の聲は、まるで調子外れの旋律ようだ。大天狗は一度深呼吸して、前方に最後の風刃を放った。
黑晴明的聲音斷斷續續,仿佛錯音的曲調,大天狗深吸了口氣,向着前方揮出了最後一道風刃。
【大天狗】
「黒晴明様!!」
黑晴明大人——
強く圧迫され、黒晴明の目隠しの帯が千切れてしまった。しかしそれでも彼は手を止めなかった。
巨大的威壓之下,黑晴明用于覆面的綢帶終于被震碎,而他卻并未停下手中的動作。
【黒晴明】
「こんなところで……負けるわけには……!臨、兵、闘、者、皆、列、陣、在、前、急急如律……」
怎麽能……在這裏就失敗……!臨、兵、鬥、者、皆、列、陣、在、前,急急如律——
まばゆい光が収まると、巨蛇は咆哮し、ようやく撤退していった。その時もうこれ以上耐えきれなくなった黒晴明が、脫力して空から落ちてきた。皆危機は去ったかと思ったが、もう一匹の巨蛇がもう一度襲ってきた。大天狗はなんとか黒晴明のそばに行こうとしたが、目の前に赤い人影がいることに気づいた。黒晴明の目の前に現れた巨蛇がまっすぐに彼の目を見つめる。まるでどうやって彼を呑み込もうか考えているようだ。しかし紅葉が突然彼らの間に現れた。
耀眼的白光過後,巨蛇發出一聲咆哮,終于暫時撤後。而此時的黑晴明再也支撐不住,脫力從半空中跌落。就在衆人以為危機将要解除,另一條巨蛇卻再度襲來,大天狗奮力向黑晴明所在的方向飛去,卻發現面前多了一道紅色的身影。黑晴明面前的巨蛇凝視着他的雙眼,似乎在思考如何将他吞噬,但紅葉卻猝不及防出現在他們之間。
【黒晴明】
「紅葉……!」
紅葉……你……!
落ちていく中、黒晴明は最後の呪符を投げ、紅葉を守ろうとした。しかし彼女には屆かず、巨蛇の瞳に刺さった。
黑晴明雖仍在墜落,但卻還是掙紮着擲出最後一道符咒,想要保護紅葉,但卻錯過她刺入了巨蛇的眼瞳。
【鬼女紅葉】
「この呪符は、やはり私を守るために……はははははは……黒晴明様……あなたは……」
這道符咒,果然是要保護我……哈哈哈哈哈哈——黑晴明大人……你還是……
【黒晴明】
「紅葉!」
紅葉!
混亂の中、黒晴明は目の前に赤い色が現れるのを見た。しかしその姿は、徐々にぼやけていった。
混亂之中,黑晴明看到自己面前出現了一抹鮮紅,但那個身影,卻在漸漸變得模糊。
【鬼女紅葉】
「どんな時でも、あなたを見ることさえ……できれば……」
無論什麽時候,只要能看到您……就……
近くにいた大天狗と雪女が嵐と氷の刃を召喚し、巨蛇に攻撃を仕掛ける。強烈な力が四方から迫り、紅葉の言葉は強風でかき消された。
不遠處的大天狗和雪女正召喚出風暴與冰刃向巨蛇攻擊而去。強烈的力量從四周掠過,紅葉的話語被狂風聲淹沒,變得支離破碎。
【鬼女紅葉】
「ふふふ……この紅葉の舞で、あなた達の力になるわ!」
呵呵呵……就讓這紅葉之舞,助你們一臂之力吧!
強烈な力の衝突の後、黒晴明と紅葉は無事に地上へと降り立った。それと同時に巨蛇も退散した。周囲は段々と光を取り戻し、靜寂が訪れた。
在劇烈的力量沖撞後,黑晴明與紅葉平安回到了地面。巨蛇也在此刻退去,四周逐漸恢複了光亮,一切歸于寂靜。
【黒晴明】
「紅葉……」
紅葉……
紅葉からの反応はなかった。
然而對方卻毫無回應。
【藤原道綱】
「紅葉さんはさっきの戦闘の中で、力を使い切ってしまったのでしょう。」
紅葉小姐在剛剛的戰鬥中,耗盡了大部分的力量吧。
【大天狗】
「巨蛇がいなくなった後、さっきの天邪鬼達も徐々に回復してきたようだ。どうしたものか……」
巨蛇退去以後,剛剛那些天邪鬼都逐漸恢複了過來,為何……
【黒晴明】
「さっきの一撃で、彼女は大量の力を失った。すぐには回復しないだろう。私が霊力を使って、彼女の回復を手伝ってみよう。彼女の身體の中には、私の呪術がまだ殘っている。一時的に意識を失っているとはいえ、深刻な狀態ではない。」
剛剛那一擊後,她失去的力量太多,一時間難以複原。我已以靈力協助,試着讓她自行恢複。她的身體裏還留存有我的咒術,除了暫時失去了意識,沒有大礙。
【藤原道綱】
「巨蛇は既に撃破され、陣眼も露わになりました。黒晴明様、ここに長くとどまるべきではないかと。急いで浄化の儀式を行いましょう。」
巨蛇已被擊敗,陣眼也已顯現出來。黑晴明大人,此地不宜久留。我們還是盡快進行淨化儀式吧。
【黒晴明】
「ああ、道綱様の言う通りだな。しかしこの陣眼の中に邪力は極めて強大だ。少し時間がかかるだろう。大天狗、雪女、先に紅葉を連れて、約束の場所に行け。私と道綱様は、この場所を徹底的に浄化した後で合流する。」
嗯,道綱大人說得不錯。但這陣眼中的邪力極為強大,恐怕需要花費一段時間了。大天狗,雪女,你們帶着紅葉先盡快抵達約定的目的地。我與道綱大人将此地徹底淨化後,便立刻與你們會合。
【大天狗】
「分かりました、黒晴明様。」
明白,黑晴明大人。