第65章 ③

祈神之宴 ②

——都の舞臺

——平安京舞臺

孔雀明王は舞臺の中心に立つと、羽の衣を翻し、軽やかに回り始めた。翼を空へ伸ばし、まるで萬物の運命を掴もうとするかのようだ。しばしの靜寂の中、誰もが目を凝らしていた。

孔雀明王來到舞臺中心,她揚起羽衣,輕盈地旋轉起來。她的雙臂伸向天空,仿佛試圖抓住世間萬物的命運。片刻的寂靜中,觀客們無一不屏息凝神。

【荒】

「彼女を信じるべきかどうか、今でもわからない。まだ何か隠しているような気がする。」

至今為止,我都無法真正确認,相信她是對是錯,總覺得她對我們,還有幾分保留。

【晴明】

「王というものは、大體そんな感じだ。」

不過為君為王者,大抵都是這樣。

【須佐之男】

「かつての彼女もそうだった。」

曾經的她,也是如此。

——數ヶ月前

——數月前

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孔雀の國に潛入した荒と須佐之男は、悪神の儀式の真実を調べるため、禁書庫にやってきた。

數月前潛入孔雀國的荒和須佐之男二人為調查惡神祭祀的真相,來到了禁書庫。

【須佐之男】

「孔雀明王が言っていた歴代の女王が短命という話は、噓ではなかったな。歴代の女王は即位してから、早ければ五年、遅くても十年で病に侵されて死んでいった。それ以上のことは史書には書かれてない。」

孔雀明王口中的女王代代短命,并非虛言。每任女王即位後,少則五年,多則十年,便會積勞成疾不治身亡,只是史書中言盡于此,并未多說。

【荒】

「真実を知るには、誰かの口から聞くしかないようだ。」

看來想要找到真相,還要靠悠悠衆口。

そうして二人は孔雀の國での調査を続けた。

——兩人于是在孔雀國都城中僞裝調查。

【荒】

「仇から逃げるため、この數十年は兄と山で暮らしていた。兄が生活のためにどれだけ苦労したか…舞を練習する餘裕などなかった。數ヶ月前、通りかかった狩人から仇が死んだと聞いて、ようやく山を出たんだ。」

就這樣,為躲避仇家,兄長帶着我進了山中一住就是幾十年,為了養活我殚精竭慮,終日奔波,更是無心…練舞。直至數月前,有獵戶偶然經過,我們得知仇人已死,這才出山來。

【孔雀の國の平民】

「やれやれ、お前の兄貴も大変だったな。もっと早く舞を學んでいれば、きっと上手に踴れたのにな、酷い話だ。」

哎,你哥哥也真是不容易,若你們二人早些練舞,也未嘗不是好苗子,你們仇家可真是作孽。

【荒】

「孔雀の國に戻ったら、女王が代替わりしていた。替わったのはいつだ?」

這回入城才知道孔雀國已是改朝換代,這是什麽時候的事?

【孔雀の國の平民】

「孔雀の國の女王は代々短命だからな、過労による病死だって昔長老たちが言ってた。」

孔雀國的女王本就代代短命,過去長老們說是為王積勞成疾之故。

そう言うと、彼は突然口をつぐんだ。

說到這裏,對方突然噤聲。

【孔雀の國の平民】

「前の女王の話はよそう。今の女王は英明で敏腕で、各地で戦を終わらせ、悪神を撃退し、民のことも気にかけてくれる。悪神は孔雀の國の霊力の大動脈に繋がっている。悪神を排除して緑豊かな孔雀の國を取り戻すために、女王はずっと悪神の行方を探してる。前の女王が悪神を蠱惑したせいで、國のあちこちが悪神の被害を受けた。彼女が身を挺さなかったら、今の孔雀の國はなかった……」

還是不說了,現任女王英明神武,上任後雷厲風行,不僅四處平亂,擊退惡神,更是體恤民情。而惡神連接着孔雀國的靈力命脈,為鏟除惡神,将孔雀國複蘇為綠洲,女王堅持不懈搜查惡神去向。因前任女王蠱惑惡神,國內處處遭到惡神的攻擊,若不是她橫空出世力排衆議,哪裏會有今日的孔雀國——

【荒】

「つまり彼女が女王の座を手に入れたのは、「長老」たちを蹴り落としたからか?」

這麽說,莫非她是靠清理了一衆「長老」才獲得的王位?

一同が何も言わないでいると、茶店の片隅からとある女性が出て行った。

衆人不語,而茶舍一角,有一位女子悄悄走了出去。

女性が路地に向かっていると、空から降りてきた者が彼女の行手を塞いだ。女性は銀針を取り出し、攻撃を仕掛けたが防がれた。

女子出門後快步走向一處小巷,卻有人從天而降,攔住了她的去路。女子反手摸出一根銀針,試圖攻擊時卻被擋下。

【須佐之男】

「君が女王の手先だということはわかっている。女王に今日の無禮を詫びておいてくれ。他人の口からは言えないこともあるかもしれない。なら直接當事者に聞けばいい、そうだろう?」

我們知道你是女王的眼線,告訴她,今日多有得罪。有些話路人或許一時不肯說,倒不如直接從當事人口中聽取,你意下如何?

【舞姫】

「誤解です。お二人に事実を知られたくないのではなく、これ以上聞くに堪えなかっただけです。」

二位誤解了,我并非是不想讓二位聽到實情,而是實在聽不下去了。

女性の聲はかすれていた。

女子的嗓音十分沙啞。

【舞姫】

「孔雀の國は古來悪神を祀り、婚姻を結んできました。女王は長老たちが悪神に捧げる生贄だったのです。しかし民は長老たちに騙され、悪神の悪行を、白孔雀様に押し付けたのです。今の孔雀明王は、先代の女王白孔雀様の妹なんです。先代の女王は神宮に行き、悪神と婚姻を結びました。その後悪神は牙を剝き、災いをもたらしました。長老たちは責任を先代女王に負わせ、それを隠蔽するために、當時王女だった孔雀明王を下僕して監禁しようとしました。孔雀明王は當時お若かったにも関わらず、しっかりとした考えをお持ちでした。長老に屈したと見せかけて、舞姫を集めました。數年後、貴族の舞踴団を率いて、名を全國に轟かせるようになりました。彼女が戻った日、どうやって悪神の機嫌をとるかについて悩んでいた長老たちは、早速彼女を召喚しました。」

孔雀國自古以來供奉惡神,與之聯姻,女王實為長老們獻給惡神的祭品。然而民衆卻遭長老們蒙蔽,将惡神的所為,推到了白孔雀大人身上。如今的孔雀明王,是上一任女王白孔雀大人的親妹妹,前女王前往神宮與惡神聯姻。此後那惡神露出本來面目,四處降下災禍,長老們将罪責推在了前任女王身上,為掩人耳目,甚至将當時的女王大人貶為奴仆,試圖□□。那時的女王大人雖年輕,依然深謀遠慮,她假意屈從長老,招募舞姬團,之後輾轉數年,搖身一變成了貴族舞團的領舞,名鎮全國。她率舞團歸來之日,長老們正為如何取悅惡神而焦頭爛額,當即就獲得了召見。

【荒】

「彼女が率いていた舞姫は、本物の舞姫ではないのか?」

但是她所率領的一衆舞姬,卻并非是舞姬嗎?

【舞姫】

「私もその中の一人でした。」

當年,我也在其中。

彼女は面紗を取って、首の傷痕を見せた。

只見她摘下面紗,露出脖子上的傷痕。

【舞姫】

「私は女王様の護衛でした。長老たちは私を奴隷として売り、餘計な問題が起きないよう、私の喉を潰したのですが、女王様が私を助けてくれました。その後、女王様は私たちを連れて舞臺に立ちました。仇に舞を見せている最中に、私たちは女王様の命令に従い、共に戦って仇を取りました。私は針で彼らの喉を潰しました。四肢の経脈が斷たれるまで、悲鳴をあげられた者はいませんでした。」

我是女王大人的護衛,當年長老們将我當作奴仆賣出,因擔心節外生枝,特意劃壞了我的喉嚨,但女王大人将我救了出來。後來,女王大人帶我們登上舞臺,在仇人面前獻藝時,奉女王之命,我們與她并肩作戰,血刃仇敵。我的銀針劃破了他們每一個人的喉嚨,直到最後四肢經脈盡斷,都沒人能喊出聲來。

舞姫は微笑むと、突然二人に向かって毒針を飛ばした。毒針は空中で紫色の煙になった。煙が散った時、彼女はもう屋根の上にいた。

舞姬微微一笑,突然朝着兩人射出毒針。那毒針在空中化為一陣紫煙,煙散去後,人已經輕盈地跳上了房梁。

【舞姫】

「悪神を封印しにきたのであれば、自分で答えを探せと女王様は仰っていました。」

女王說,倘若你們真的是前來封印惡神的人,就去自己尋找答案吧。

そう言い終わると、彼女は姿を消した。

說罷便一個轉身,消失不見。

【荒】

「孔雀明王、思ったより一筋縄ではいかないな。」

看來這位孔雀明王遠比我們所預想的要有手段。

町から離れた砂漠で、二人はやっと廃れた□□悪神の宮殿を見つけた。荒が星で內部を照らした。真ん中にあったのは、悪神の一人、迦摩天の石像だった。周囲には迦摩天の偉業を讃える壁書きがある。

在遠離城郊的荒漠之中,二人終于找到了已廢棄的□□惡神宮殿。荒點亮星光照亮四壁,端坐正中的石像,俨然是惡神之一的迦摩天,而四面刻着的則是歌頌贊揚迦摩天豐功偉績的篇章。

須佐之男が天羽々斬を召喚して、悪神の痕跡を探る。宙に浮かび前後に回転する剣は、反応がないわけではないが、戸惑っているように見える。

須佐之男召喚出天羽羽斬,搜尋惡神的蹤跡,然而神劍漂浮在空中來回旋轉,并非沒有反應,卻像是猶豫不決一般。

【須佐之男】

「ここに來た時からそうだ。わずかに悪神の気配があって、天羽々斬も何度も反応しているが、源がわからない。□□の神の本體は蠍で、砂嵐を操る力を持つ。この砂漠の世界と一體化していると言っても過言ではない。砂に隠れているとしたら、孔雀明王がやつを見つけられないのも納得だ。」

來時我就發現了,惡神的氣息微弱,天羽羽斬屢次有反應,卻找不到源頭。□□之神的真身是一只毒蠍,擁有操控沙暴的力量,說他和這沙漠的世界本是一體,也不為過。藏于黃沙,難怪連孔雀明王都無法找到他。

【荒】

「そういうことなら、宮殿の砂を媒介にすれば、星海で悪神について何か手がかりを得られるかもしれない。」

若是如此,以惡神宮殿的黃沙為媒介,在星海中,興許能窺見這惡神身上究竟發生了什麽。

荒が星海の幻境を召喚して宮殿を覆った。悪神の神像と壁書きが海水に映り、流光になった。

荒于是召喚星海幻境,鋪陳在神廟之中,惡神神像與四壁的石刻映照在海水之中,化為流光。

しばらくして、悪神の宮殿での出來事が映し出された……

片刻之後,幻境中顯現出了曾在惡神宮殿發生的景象——

【迦摩天】

「汝か。」

是你?

【神堕ロチ】

「千年ぶりでも一目で分かるとは、嬉しいものだな。」

時隔千年還一眼就認出了我,真是榮幸之至。

【迦摩天】

「汝は変わっていないな、どんな手を使って封印を破ったのやら。ここに來たということは、他の悪神のところにも?」

你倒是一點都沒變,也不知道是使了怎樣的手段突破了封印。如今尋到這裏,可是與其他惡神都會了面?

【神堕ロチ】

「謙遜することはない。お前が一人目かもしれないぞ?」

何必妄自菲薄,興許我是第一個來看望你的呢?

【迦摩天】

「……はははは!本當に相変わらずだな。悪神に會うたびに同じことを言っているんじゃないだろうな?まあいい、吾が何人目だろうが、協力者が何人いようが、お前の話に乗るつもりはない。あの世界は吾を捨てた。故に吾も躊躇なくその世界を捨てることができる。この世界での吾は、孔雀の國に祀られる神、災いをもたらす悪神。吾こそがここの支配者、萬物の源。蛇神よ、昔のよしみに免じて、ここから出る手助けをしよう。しかし今回は、汝についていくことはない。」

……哈哈哈哈!蛇神你還是老樣子,該不會跟每個惡神見面後,都是這般說辭罷。罷了,無論你之前造訪了我等惡神中的幾名,你的計劃又得到了幾人的相助,我這次是無法答應你了。原本的世界既抛棄了我,我自然也可以毫不猶豫地将之舍棄。而在這個世界,我是被孔雀國供奉的神明,也是降下天災的惡神,是這裏的主宰,也是萬物的本源。蛇神,看在往日的恩情,我會助你離開,但這一次,我不會再跟你走了。

【神堕ロチ】

「面白い。新しい牢獄に長い間閉じ込められて、愛着が湧いてきたわけか。」

真是有意思,你在這新的牢獄中住了太久,竟對這牢獄産生了眷戀之心。

【迦摩天】

「吾の気は変わらない。」

我心意已定。

【神堕ロチ】

「確かにお前は変わった。神獄を脫獄する時、お前たちは何でも言うことを聞いてくれたのに、今は皆、自分の考えがある。あの時と違って……お前には妻もいるしな。」

如今的你,确實不同往日,當年我帶你們離開神獄時你們還百依百順,現在卻各有各的主意。畢竟今時不同往日—你也是有妻室的人了。

それを聞いた□□の神は、面白い冗談を聞いたように大いに笑った。

聞言,□□之神仿佛聽到了笑話般大笑。

【迦摩天】

「蛇神、長い間牢獄に閉じ込められて忘れてしまったかもしれないが、吾は□□を司る迦摩天、妻などただの食料に過ぎない……」

蛇神,你可是在牢獄中關了太久,可是忘記了,我是司掌□□的迦摩天,妻妾于我,不過是一道道美食——

【神堕ロチ】

「ならば、この地に拘る理由はなんだ?まさか千年の時を経て、□□の神であるお前が……美色に蠱惑されたとでも?」

那究竟是什麽讓你舍不下這片國土?難道說時隔千年,身為□□之神的你——竟也有被美色蠱惑的一天?

それを聞いた□□の神が一瞬の隙を見せた。それと同時に、ヤマタノロチが彼に呪いの烙印を押した。悪神は逃れようとしたが、ヤマタノロチが変身した蛇が大口を開け、一気に彼を呑み込んだ。ヤマタノロチが人の姿に戻ると、悪神の姿は消えていた。

聞言,□□之神一瞬恍惚,而與此同時,八岐大蛇将一枚詛咒烙印打在了他身上。惡神急忙想要掙脫,卻見八岐大蛇化為了蛇形,巨蛇張開大口,竟一口将之囫囵吞下。待到八岐大蛇重新化為人形,惡神的蹤影已無處可尋。

【神堕ロチ】

「実に殘念だ。しかし、世界の霊脈と繋がった悪神か。お気に入りの世界と共に、我が新世界の餌食になるがいい。」

真是可惜。不過,連接着一整個世界靈脈的惡神?就讓你中意的這個世界和你一起,化為我那新世界的食糧罷。

映像が急に途切れた。

畫面到此戛然而止。

【荒】

「これで、悪神の行方がわかったな。早く対処しないと、この世界が崩壊するのも、時間の問題だ。」

看來,我們找到了惡神的去向。如果不盡快解決此事,這個世界的分崩離析,也只是時間問題。

——孔雀明王の宮殿

——孔雀明王殿中

荒と須佐之男が孔雀明王の謁見を受けた。二人は悪神の行方の調査結果と、ヤマタノロチのことを話した。

孔雀明王再次接見了荒和須佐之男。于是,二人向她講述了調查惡神去向的結果,和八岐大蛇的所為。

【孔雀明王】

「そういうことなら、悪神が行方不明になったにも関わらず、我が國の霊力が吸われ続けていたのも頷ける。ふん、勝てば官軍負ければ賊軍。ヤマタノロチは今どこに?」

竟是如此,難怪惡神不知所蹤,卻依舊在吸食我國土命脈的靈力,致使靈力枯竭,民生凋敝。罷了,自古以來成王敗寇,八岐大蛇如今身在何處?

【荒】

「時空の隙間にいる。」

時空縫隙之中。

【孔雀明王】

「悪神がいなくなってから、私は緑の大地を取り戻すために、災いと疫病を鎮めてきた。災いは終わらせることができ、疫病は治療することができるけれど。子供が生まれないことだけは、どうしようもできなかった。□□の神、皮肉なものね。やつが殘した呪いなのか、それとも……」

自惡神退去,我便在不斷平定四起的災禍,橫行的瘟疫,誓要複蘇逐漸消退的綠洲。然而災禍可以平定,瘟疫可以救治。唯獨人人都無可奈何的是,這國土上,竟從此再也沒有誕生過孩童。□□之神嗎,還真是諷刺,這是他最後所留下的詛咒嗎,亦或是……

最後の言葉は彼女にしか聞こえなかった。しばらくして、彼女は微笑んだ。

最後一句話說得十分輕,只有她自己能夠聽見,片刻後又突然露出笑容來。

【孔雀明王】

「二人が全てを打ち明けてくれた以上、私も腹を割って話すわ。二人が悪神を見つけてくれたら、私は必ずやつを葬り、霊脈を元に戻し、孔雀の國の息を吹き返してみせる。この孔雀明王できることがあれば、なんなりと。」

既然二位開誠布公,我就也不賣關子了,二位遠道而來,只要能助我找到惡神,我定要将其手刃,靈脈歸位,還孔雀國生機。只要是能做到的,我孔雀明王義不容辭。

【荒】

「ならば祈禱の舞を頼みたい。千年の眠りについた太陽の女神、天照様を呼び起こすために。」

我們想請你來做一場祈神之舞,以喚醒沉睡千年的太陽女神——天照大人。

——數ヶ月後、虛無の海の奧深く

——數月後,虛無之海深處

【荒】

「星海から得た情報によると、ヤマタノロチはこの海域に潛んでいるらしい。もともとは月海へ逃げるかと推測していた。我が師月読が復活した後、ヤマタノロチは同じやり口で、蛇魔に意識を移して月海に現れた。しかし、月読は彼を拒否した。先生は…過去の執念を捨てたようだ。」

從星海中窺探到的情報來看,八岐大蛇一直躲在這片海域中。最初,我曾猜測他可能會逃往月海,在吾師月讀複活之後,八岐大蛇曾故技重施,将意識附在蛇魔身上,在月海中現身。不過,月讀拒絕了他。看來老師他…已放棄了曾經的執念。

【須佐之男】

「堕落の神力が濃くなっている。ここに潛むヤマタノロチは、逃げられないほどの重傷を負ってるはずだ。真実がどうなのか、彼を見つけて確かめよう。」

堕落的神力越發濃厚,八岐大蛇不僅潛伏在此,而且恐怕已重傷到無法逃走。真相究竟如何,就看我們找到他之後了。

須佐之男が風雷を召喚して虛無の海を割った。荒が星々を召喚する。無數の目が押し寄せてくるようだ。星の夜に雷鳴が轟き、闇に包まれていた死の海を何度も照らした。

須佐之男召喚雷鳴暴風劈開虛無之海,荒召喚群星出現,如萬千只眼睛步步緊逼。星夜雷鳴,将這千萬年不見光明的死海一次又一次地照亮。

【荒】

「さっきから、ヤマタノロチの気配の源に変化はない。彼はすぐそこにいる。畳み掛ければ……」

從剛才開始,八岐大蛇的氣息來源就沒再變化過。看來他就在眼前,只要我們乘勝追擊——

【須佐之男】

「気をつけろ。」

小心。

雷光に照らされた海に波が起こり、靜かだった死の海に鱗が光る。突然、光る鱗が海から飛び出すと、漆黒の巨蛇が現れ、二人に襲いかかった。咄嗟に須佐之男が雷槍を持って、その場に結界を張る。

雷光照亮海水掀起波濤,原本一片平靜的死海顯露出片片鱗光。突然,那鱗光脫離海水一躍而起,竟然是一條條漆黑的巨蛇,徑直向二人襲來。情急之下,須佐之男以雷槍劃地為結界。

【須佐之男】

「荒、下がれ!」

荒,退後!

【荒】

「後ろにも蛇魔がいる、囲まれたか。」

身後也是蛇魔,竟是被包圍了。

【須佐之男】

「あれはヤマタノロチの蛇魔ではない。」

這不是八岐大蛇的蛇魔。

巨蛇は稲妻に沿って上ると、稲妻を呑み込んでしまった。その全身が雷光を纏い、須佐之男の鎧に似た光を放つ。須佐之男が正面から巨蛇の首を切り裂くと、蛇の體が海に落ちた。しばしの靜寂の後、海から無數の蛇尾が伸びてきて、二人を後方から襲おうとしたが、星々と雷電に打ち砕かれた。海から湧き出る蛇魔が後を絶たないのを見て、二人は光を消した。雷鳴がおさまり、星々が消えていく。蛇の群れは躊躇いを見せ、しばらく徘徊した後、海に戻っていった。

只見那些巨蛇迎着閃電而上,竟将閃電吞食,渾身閃耀着電光,竟顯露出與須佐的盔甲相似的光芒。須佐之男迎面而上,一槍劈開巨蛇脖頸,蛇身落入海中。片刻沉寂後,海中又湧出無數蛇尾伸出水面,自後方試圖偷襲二人,卻被二人以群星和雷電擊碎。然而海中湧出的蛇魔源源不絕,見此二人熄滅各自的光芒,雷鳴散去,群星隐去。只見蛇群若有所思,徘徊一陣後,竟掉頭游走了。

【須佐之男】

「やつらは命を取りにきたのではなく、光が嫌いなだけか。光が嫌なら、何故自分の中に取り込む?」

它們并不是要取人性命,而是厭惡光輝。明明厭惡光輝,又為何要吞食它,與它化為一體?

【荒】

「蛇魔の目的はさておき、この海にいる限り、虛無の力は無盡蔵だ。やつらを徹底的に倒すことはできない。しかし君の言う通りだ。あれはヤマタノロチの蛇魔ではない。さっき、ヤマタノロチの気配が全盛期よりもさらに數倍強くなった瞬間があった。その後…彼の気配がこの海域から完全に消えた。」

且不論蛇魔的目的何在,只要在這片海水中,虛無之力取之不竭,就無法徹底殺死他們。不過,你說的不錯,這确實不是八岐大蛇的蛇魔。因為就在剛剛那一瞬,八岐大蛇的氣息,突然變得比全盛時還要強大數倍。然後…他的氣息就從這片海域中,徹底消失了。

二人は虛無の海を去った。

兩人從虛無之海離開。

【須佐之男】

「案ずるな、手掛かりはある。巨蛇に襲われた時、蛇の腹部に変な印があった。何の印か知ってるか?」

別擔心,也不是線索全無。剛才巨蛇偷襲時,我在蛇的腹部看到了一個奇怪的印記,你可認識?

須佐之男が雷で印の模様を作った。

須佐之男以雷電構築出印記的樣子。

【荒】

「これは……ヤマタノロチが□□の神に打ち込んだ烙印か?千年間見聞を広げてきたが、似たような印は見たことがない。」

這是……八岐大蛇在□□之神身上打下的烙印?我在世間游歷千年,卻也并沒有見過這樣的印記。

【須佐之男】

「俺は見たことがある。」

不過,這個符號我還真在別處見過。

【荒】

「ほう?」

哦?

【須佐之男】

「天羽々斬に封印されていた五人の悪神の體にあった印だ。まるで所有権を見せつけられているようだった。しかし千年前、彼らの身にあんなものはなかった。あれを殘したのが蛇魔の主だとしたら……」

封印在天羽羽斬中的五個惡神身上,都有這個印記,仿佛是在宣示着所有權。但在千年前,他們的身上并沒有這個東西。倘若這個印記是那些蛇魔之主留下的……

【荒】

「どうやら、相手は始祖級の至高神のようだな。」

那看來,我們怕是對上了一位始祖級別的至高神了。

【須佐之男】

「虛無の海の至高神……」

虛無之海的至高神……

そう言うと、須佐之男は漆黒の海を眺めて考え込んだが、それ以上何も言わなかった。

言罷,他望向遠處漆黑的海面,若有所思,卻并沒有往下說。

都に戻った荒は、晴明を訪ねた。その後すぐ、祈神の儀が始まり、異國の舞姫孔雀明王が舞臺に上がった。孔雀明王が裸足で身を支え、時に回転し、時に俯く。そして力を抜かれたかのように目を細め、展開していた尾羽がゆっくりと垂れていく。心を躍らせた一曲が終わり、観客席から雷鳴のような拍手が湧き上がった。晴明は舞臺裏で待っていた。舞臺から降りてきた孔雀明王と目が合う。

回到平安京後,荒找到晴明議事,不久後,祈神儀式便在京都開啓,異國舞姬孔雀明王的登臺獻舞。只見,臺上的孔雀明王以裸足撐地,一面旋轉,一面低下頭來,如同困倦般地眯起眼睛,展開的尾羽慢慢垂下來。在給衆人帶來歡欣鼓舞之後,一曲終了,觀客爆發出雷鳴般的掌聲。晴明已經在舞臺後等候多時,擡頭看見孔雀明王一步一步地迎面走下臺階,對上她的雙目。

【孔雀明王】

「話は彼らから聞いたようね、あなたと二人で話したいことがあるわ。」

——その頃、遙か彼方の虛無の海

——與此同時,在遙遠的虛無之海之中

【伊邪那美】

「世間の萬物は、それぞれ異なる姿で生まれながらも、互いに惹かれ合う。水を泳ぐ魚は空を飛ぶ鳥を眺め、鳥は蝶になる夢を見る。形のある身體、形のない魂、執着する必要などない。」

世間萬物,生來就有了各自的形态,然而又往往彼此豔羨。水中的游魚遙望天上的飛鳥,而飛鳥則在夢中化為蝴蝶。有形的身體,無形的靈魂,又有何必要執着。

【神堕ロチ】

「これぞ歌舞の素晴らしいところだ。人が創造した歌舞で、人は鳥にも、遊魚にもなれる。時には人間から神になったり、妖怪になったり。まるで夢のようだ。これが人の世の醍醐味、私が夢中になる所以。」

這便是歌舞的精妙之處,世人創造了歌舞,它便使人在頃刻間化為飛鳥,化為游魚。時而又以凡人之身化為神明,化為妖鬼,仿若一場幻夢。這是人世的绮麗之處,也是我欲罷不能的緣由。

【伊邪那美】

「あなたはそんな夢を欲しているのか?」

你是在期盼那樣的夢嗎?

【神堕ロチ】

「人にとって、神は手の屆かない存在、まさに夢のようなもの。きっと夢の中で、あなたになった者もいるだろう。」

對世人而言,神的存在不可捉摸,原就如一場夢境。我想,一定也有人會在一場幻夢中,化為你吧。

【伊邪那美】

「しかし私から破滅の力を手に入れた者はいない。たとえ一瞬でもな。」

又有誰能從我手中借走毀滅的力量,哪怕只有一瞬。

【神堕ロチ】

「もちろんそれは不可能だ。破滅の女神は唯一無二、完璧な存在なのだから。たとえ噓の夢の中でも、あなたから何一つ奪うことはできない。ただの拙劣な真似事に過ぎない。しかし夢にも色んな形がある……自分の手で罪の果実をもぎとるほど、素晴らしいことはないだろう?」

當然不可能,毀滅女神的完美是獨一無二的。哪怕是在自欺欺人的夢中,也無人能奪走你的一絲一毫,不過是些拙劣的模仿罷了。但夢也有許多種——又有什麽比親手摘下罪惡的果實,更精彩的呢?

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