第72章 ⑩
祈神之宴 ⑩
皆の総攻撃を喰らい、大蛇神は倒れた。祈禱の舞の力は絶え間なく太陽に注ぎ込まれている。しかし天照を囲むヤマタノロチの赤黒い瘴気は、最後の牢獄であるかのように、眠る女神を拘束している。
大蛇神在衆人的圍攻中倒下,祈神之舞的力量源源不斷地輸向了太陽。然而在天照女神的周圍,環繞着八岐大蛇的黑紅瘴氣,如同最後一道禁锢,束縛着沉睡的女神。
【神堕ロチ】
「新世界を降臨させたら、高天原の神王をこの世から消し、神々の法則を完全に無にする。その時、浮世には罪がはびこり、衆生は法に縛られない自由を手に入れるだろう。」
等到新世界降臨,我要做的頭一件事,就是讓高天神王隕落,将衆神的法則徹底抹去。屆時,放眼望去,皆是人世,世間遍地,皆是罪惡,衆生将獲得自由,不再被規則拘束。
次の瞬間、槍に貫かれたヤマタノロチは堕神の力を集め、不動の構えをとった須佐之男に急襲を仕掛けた。雷槍を抜いた須佐之男は、槍に染み付いた蛇血を振り落とすと、今度は正面から迎え打つ。
言罷,被槍貫穿的八岐大蛇彙聚堕神之力,攻向了巋然不動的須佐之男。須佐之男一把抽出雷槍,甩掉槍上的蛇血,正面迎擊。
【神堕ロチ】
「思う存分追いかけ、探し求めるがいい。殺戮こそが、お前の救いなのだ。」
盡情去追逐,去渴求吧,因為只有殺戮,才是你的救贖。
【須佐之男】
「いつまで隠れているつもりだ?」
你打算躲到什麽時候?
【神堕ロチ】
「私は隠れてなどいない。目の前にいるのに、お前が私を見ないのだ。お前はいつもそうだが、私はとっくにお前を見抜いている。お前の友人たちは、今のお前を目にしたら、一體どう思うだろうな。」
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我不曾躲藏,我就在你的眼前而你卻看不清我。你我之間仿佛向來如此,我卻一眼看清了你。你口中的友人們,不知道他們看到如今的你,會作何感想。
握りつぶした蛇魔が晴明に化けたので、須佐之男はヤマタノロチの首を絞めた。しかしヤマタノロチだった者は、倒れながらまた姿を変え、神楽になった。
須佐之男手中捏碎的蛇魔竟變成了晴明的樣子,于是他轉而捏住了八岐大蛇的喉嚨,然而手中的人倒下時卻又化為了神樂。
【神楽】
「皆を守るって……約束したのに……」
你說過……會保護我們……
彼を囲んで無遠慮に哄笑するヤマタノロチの幻影は、老若男女に、天照に、荒に、陰陽師たちに、彼の知っている人々に化けた。
八岐大蛇的幻影圍繞着他發出笑聲,那笑聲又各自變成男男女女,蛇魔的身形化為他所知的許多人,天照,荒,陰陽師們。
【天照】
「須佐之男……よもやあなたは……」
須佐之男……你難道……
須佐之男が恐ろしい唸り聲を上げると、彼の召喚に応じた雷や稲妻は幾千もの戦馬に姿を変えた。いななきながら空を駆け抜け、怒濤の如く彼に突進していく。空を駆けて現れた幾千もの戦馬は、崩れた山のように須佐之男に押し寄せていく。稲妻となった戦馬が、鋭い爪を生やした彼の右手に絡みついた。雷がひしめく蛇を一掃し、それらを全て灰に変えた。
須佐之男口中發出狂暴的嘶吼,雷鳴風暴受他召喚,化作萬千奔湧的戰馬朝他沖來,馬蹄聲與嘶鳴聲有如層層波濤。萬千戰馬自雲端縱深躍過,瀑布般朝着須佐之男傾瀉而下,白色的身軀融化成雷電,纏繞上他化為利爪的右手。閃電席卷了周圍無盡的蛇群,蛇群紛紛被劈為灰燼。
【須佐之男】
「罪も世界も、俺が全部背負ってやる——」
罪孽也好,世界也罷,我都會一并背負——
雷の閃光が走り出したその瞬間に、須佐之男の右腕がヤマタノロチの左胸を貫いた。稲妻がヤマタノロチと黒い蛇の大群を呑み込む。雷に包まれた世界が血色に染め上げられていく中、ヤマタノロチはただめまいを覚えた。しばしの沈黙のあと、赤い世界に雷鳴が轟いた。血色が褪せると、闇の中に無表情の須佐之男が現れた——
とっくに臨界點に達した嵐の結界は、これ以上稲妻の力に耐えられなくなり、音を立てて砕けた。無數の雷に貫かれたヤマタノロチが重傷を負った時、須佐之男の周囲を漂う毒々しい堕神の力が太陽のほうに拡散していった。その瞬間、空から星々が降り注いできた。
萬電齊發,須佐之男的右手深深插入了八岐大蛇的左胸位置。電光淹沒了八岐大蛇和黑色的蛇群,世界在雷暴中化為一片血紅,八岐大蛇只覺得頭暈目眩。片刻的沉寂後,血紅之中響起隆隆雷聲,紅光褪去,黑暗中重新浮現出須佐之男冷峻的面容——
風暴結界不堪重負,再也無法承受雷暴的力量,砰的一聲碎裂開來。八岐大蛇受到萬千雷暴的穿刺,身軀遭受重創之時,須佐之男周身的堕神之力也如同毒物一般朝着太陽的方向擴散而去。然而就在這時,群星自天邊傾瀉而下。
【晴明】
「須佐之男様。」
須佐之男大人。
時を同じくして、いくつもの呪符が結びつけられた矢が放たれた。炸裂し、太陽を中心にいくつかの結界を展開する。
與此同時,一支有數道咒符纏繞的利箭迎面射來,一擊中頓時炸裂為數層結界,将太陽層層護住。
【禦饌津】
「皆危ない、離れて!」
大家小心,退後!
【神啓荒】
「目を覚ませ、須佐之男。それは本當の君ではない。」
醒過來,須佐之男,這不是你。
靜かで神秘的な星海が、この世の全てを包み込んだ。
靜谧而神秘的星海包裹了世間的一切。
【神啓荒】
「我が友、我が先導者は、悪意に心を委ねる暴漢ではない。彼はこの世で、この星海で、最も眩しい雷光だ。」
我的友人,我的引路之人,不是一個滿心惡念的暴徒,而是這世上,這星海中,最耀眼的雷光。
波立つ海に呼び起こされた須佐之男は、水に濡れた髪をかきあげ、無限に広がる星空を見上げる。空を彩る星々や、さざなみが立つ海を見て、彼は一瞬茫然とした。周囲で戦っている人々を目に捉えると、須佐之男の周りを漂う赤黒い瘴気は、徐々に抑制され、消え始めた。
須佐之男被湧動的海浪喚醒,擡頭抹了一把發絲上的水,望向漫天星辰。見繁星滿天,波光粼粼,一時竟有些恍然。在看到了身邊戰鬥着的衆人後,環繞在須佐之男周身的黑紅色瘴氣,逐漸消退,似乎被壓制了一般。
【須佐之男】
「荒の言う通りだ。俺は彼の友であり、また危険を顧みずに戦っている人々の友だ。俺は人々のために道を切り開く先駆者であり、同時に皆を支える後援者でもある。」
荒說的不錯,我是他的友人,也是在這裏所有奮不顧身戰鬥着的人們的友人,是他們的前鋒,也是他們的後盾。
重傷を負ったヤマタノロチがじきに拘束を破り、巨神から飛び降りようとしているのを見て、須佐之男は一歩前に出ると、落ちていく彼に稲妻の鎖をかけた。あと數寸で地面に觸れようという時に、ヤマタノロチは捕縛された。須佐之男が天照を抱き抱え、太陽の女神を安全な結界の內部に移動させた。空をも覆い隠す星海や雷光、陰陽術によって紡がれた巨大な網が、眩しい光を放ちながら、ヤマタノロチのほうに落ちていく。
眼看重傷的八岐大蛇就要掙脫,跳下法相,須佐之男上前一步,雷電鎖鏈纏繞住了他下墜的身體。八岐大蛇被攔在了距離地面只有數寸遠的地方,層層纏住。須佐之男一把抱起天照,将太陽女神置于安全的結界後。只見星海,雷光和陰陽術鋪天蓋地而來,群星璀璨,法術織為天羅地網,朝着八岐大蛇的方向落下。
【晴明】
「ヤマタノロチ、大蛇神が討たれた時から、お前の敗北はすでに決まっていた。」
八岐大蛇,早在那大蛇神死時,你便大勢已去。
鎖に繋がれ地上に落ちたヤマタノロチは、目の前にいる人々を見た。
渾身纏滿鎖鏈的八岐大蛇落在了地上,望向眼前的衆人。
【神堕ロチ】
「古來より、霧を讃える言葉は數え切れないほどあった。その理由が分かるか?人々は詳しく知りたいとは思わない。曖昧な部分があるから、美しいと褒めそやし、善と讚稱する。こう考えたことはないか?もし天照がその身から悪神を切り落とさなければ、様々な悲劇は回避できていたかもしれないと。」
自古以來,有多少詩句是為了贊美霧色,你們可知道是為什麽?世人不想将事事看清,凡事有三分迷蒙,方稱之為美,謂之為善。你們可曾想過,如果天照并未分離出惡神,興許也就不會有那許許多多的悲劇。
【晴明】
「人々は真相を目にしても、見て見ぬふりをするかもしれない。光を恐れ、遠くに留まるかもしれない。それでも永遠に、真相と真実に憧れ、真理を獨り占めすることに憧れる。憧れあってこその恐れだ。持たざる者は失うことを恐れない。真相や真理に関しても、同じことが言える。」
世人或許會對真相視而不見,或許會對光明望而卻步。但卻永遠渴望着真相,渴望着真實,渴望着将真理據為己有。恐懼正是因為渴望,無欲則剛,哪怕是對真相真理,也不外如此。
【神堕ロチ】
「ほう?ならば、私も天照にならって、己の罪を捨ててみよう。」
哦?既然如此,就讓我今天效仿一次天照,摒棄一次滿身的罪惡。
そう言い捨てると、ヤマタノロチの體は突然細かくひび割れ、噴火寸前の火山の如く、大量の黒い瘴気を放ち始めた。亀裂だらけの體は、腐敗の力をいつ噴き出してもおかしくない——
言罷,八岐大蛇的身體突然顯露出無數的裂縫,如同即将噴發的火山一般,散發出濃烈的黑色瘴氣,外殼不斷龜裂,仿佛随時将有腐化之力要噴薄而出——
【神堕ロチ】
「この世に何が起きるのか、お前たちに見せてやろう。」
讓你們,也讓這個世界好好看一看,會發生什麽吧。
【神楽】
「ヤマタノロチは何をしようとしてるの?」
八岐大蛇是要做什麽?
【縁結神】
「まずい、ヤマタノロチが正體を現そうとしておるぞ!」
糟了,八岐大蛇這怕是要顯露真身了!
【源博雅】
「あいつの正體は蛇じゃないのか?」
他的真身不是一條蛇嗎?
【八百比丘尼】
「いいえ、それはあくまでも人間界にいる時の擬態に過ぎません。」
不,那只是他在人間的拟态。
【孔雀明王】
「こんな恐ろしい力、初めて見る。」
我從未見過如此詭異的力量。
【神啓荒】
「ヤマタノロチの正體は彼の力の源だ。彼が神として象徴する力、そして虛無の海の鍵。千年前の審判の前、私は星海の予言を通じて、審判で正體を現したヤマタノロチがもたらす災いを見た——罪の汚れが世界中を侵食し、やがて世界に滅びをもたらす。」
八岐大蛇的真身是他力量的本源,是他作為神明所代表的力量,更是虛無之海的鑰匙。在千年前的審判之前,我曾在星海的預言中看到過八岐大蛇在審判上自爆真身的後果——罪惡的污染會侵蝕整個世界,最終導致世界的消亡。
【小白】
「じゃあどうすれば止められるんですか?!」
那該怎麽阻止他呀!
【須佐之男】
「天羽々斬!」
天羽羽斬!
須佐之男の召喚に応じ、六振りの天羽々斬がヤマタノロチの周りに出現した。しかしその時、ヤマタノロチは軽やかに宙に舞い上がり、怪しい光を放ち始めた。
六把天羽羽斬,在須佐之男的召喚下浮現在了八岐大蛇的四周。然而此時,八岐大蛇的身軀輕盈地漂浮在空中,散發着奇異的光芒。
【神堕ロチ】
「天照は自身の罪を切り落とし、神々の王となったのに、私ではだめなのか?須佐之男、お前は悪を切り落とした後の私に顔を合わせる勇気がないのか?私の罪の重さに怯えているのか?真相に、真実に憧れると嘯いたのに、私の真相に、私の心に秘められた真実に、処刑の神は怯えているのか?」
天照可以剝離自己的罪惡,化為神王,我卻做不得嗎?須佐之男,還是你不敢看剝離了惡以後的我究竟是什麽樣子?我這裏的罪惡,究竟有幾何?自稱渴求真相,渴求真實,而我的真相,我心中的真實,處刑之神卻不敢渴求麽?
須佐之男は何も答えなかった。血まみれの彼は、全力で天羽々斬を操りながら、ヤマタノロチを追い詰める。何度か攻撃を避けたが、限界を迎えたヤマタノロチは、とうとう右腕に攻撃を受け、地面に倒れた。次の瞬間、六振りの天羽々斬が同時に彼を貫いた。しばらくすると、彼の體に浮かび上がったひび割れは消え去り、怪しい光も収まった。封印されたヤマタノロチは空の上にある太陽を見上げた。雲の晴れた空は、澄み渡っている。巨神の手の中にある太陽が、またゆっくりと空に昇っていく。蛇魔の瘴気から解放された太陽は再び眩しい光を放ち始めた。眩しい光の中、聖なる女神が姿を現した。
須佐之男并不答話,他渾身浴血,全力操縱着天羽羽斬追擊向八岐大蛇。八岐大蛇幾番躲閃,卻已經是強弩之末,最終被一擊擊中了右手手臂,跌落回地面。緊接着,六柄天羽羽斬一并刺向了他,片刻之後,他身上的裂痕退去,那詭異的光芒也盡數散去。被封印的八岐大蛇仰頭望向高處的太陽,只見雲霧終于散去,青天重現,那薄如蟬翼的太陽自法相的手中,重新緩緩升回了空中。不再被蛇魔污染的太陽迸發出耀眼的白光,在那光輝之中,浮現出女神聖潔的身軀。
白衣をまとった天照はゆっくりと目を開け、足元に広がる世界と衆生に目を向ける。その瞬間、優しそうだが無表情な彼女が、何かを懐かしむような表情を見せた。光と雲が彼女の足元で階段となる。風は露を揺るがし、森や海や山を吹き抜け、全てを美しい景色の一部に変える。萬物は息を殺して待っている。女神が平安京に降り立った瞬間、燃え盛る炎も吹き荒ぶ風も収まり、あらゆる邪悪はたちまち姿を消した。代わりに百花が咲き亂れる。光が降り注ぐと、人々の傷はたちどころに治癒し、心に巣食う不安もどこかに飛んでいった。周囲を見渡すと、人混みの中で星海を操り皆を守っている荒と、血まみれになっても片時も自分の側を離れなかった須佐之男が、天照の目に映った。
一襲白衣的天照緩緩地睜開了雙目,她望向腳下的世界與衆生,那一瞬,那張柔和卻也冰冷的臉上,浮現出一抹懷念。光輝和雲朵在她的腳下化為階梯,清風和露水一并搖曳,森林,海洋,山巒,皆顯露出最美的樣子,屏息凝視地守候着。在女神的腳步同時踏上平安京的那一瞬,烈火熄滅,狂風停歇,群魔消散,取而代之的是花朵綻放。光芒之所至,衆人身上的傷痕紛紛愈合,甚至連心中的陰霾,都一并一掃而空。四下望去,天照看到了人群中驅使星海守護衆人的荒,以及滿身血污卻仍舊站在自己面前的須佐之男。
【天照】
「須佐之男、荒、待たせました。」
須佐之男,荒,讓你們久等了。
須佐之男は何も言わずに片膝をつき、帰還した女神を迎える。人々に囲まれている荒も少し頭を下げ、女神にお辭儀をする。三人は流れるような動きで挨拶を交わした。まるで千年間の別離が噓であるかのように息ぴったりで、互いを信頼し合っていた。やがて、天照は天羽々斬に封印され、身動きが取れなくなったヤマタノロチに目を向けた。
須佐之男并不說話,單膝跪在了女神的身前,迎接她的歸來。而在人群中的荒則微微欠身,向女神行禮。三人的動作一氣呵成,仿佛并沒有那千年的離別,有的只是默契和信賴。天照的目光,最終落在了被天羽羽斬封印,動彈不得的八岐大蛇身上。
【天照】
「あなたのことも……待たせたようですね。」
你也…久等了。
【神堕ロチ】
「天照よ、千年ぶりだな。そこにいるのは、萬物に息吹を吹き込む女神か、罪を生み出した悪魔か?」
天照啊,久別千年,如今在我面前的,究竟是複蘇萬物的女神,還是孕育罪惡的惡魔呢?
【天照】
「千年の間眠っていましたが、ついにこの日が訪れました。私たち三人が千年後のこの時代で再會を果たしたのは、全て運命の導きです。」
沉睡千年,這一天終究是來了。我們三人在千年之後才聚首在這個時代,天命如此,自有它的用意。
そう言うと、天照は太陽があったほうを見上げた。そこにある神力で作られた薄い外殻は、暗くなっている。ヤマタノロチが正體を現そうとした影響を受け、力を失ってしまったそれは、もはや赤黒い瘴気を防ぐことができなかった。
言罷,天照擡起了頭,望向了太陽原本所在的方向,那個神力所鑄的薄薄的輪廓變得暗淡。在八岐大蛇險些自爆真身之後大為削弱,再也無力抵禦那黑紅色瘴氣的侵蝕。
【神啓荒】
「やはり世界の運命は、星海の予言通りに動いている……「陰陽の均衡が崩れる時、世に現れし虛無の鍵、世界創造の始まりにて封印されし扉を開く。太陽の女神の輝きにより闇を払わん。」だが我々はヤマタノロチが正體を現そうとしていたのを止めた。だから扉は完全に開かなかった。代わりに——」
世界的命運,終于還是照着星海中的預言那般行進了……「陰陽平衡逐漸崩壞之刻,虛無的鑰匙現世,打開自創世之初便被封印的大門,唯有太陽女神的光輝将驅散所有陰霾。」但我們阻止了八岐大蛇自爆真身,因此大門也并未完全開啓,出現的是——
人々の注目を浴びる太陽は、やがて赤黒い円環に変わった。それはまるで、空に出現した鍵穴のようだ。その小さい鍵穴を通して、人間界は世界の外側と繋がってしまった。虛無の海の潮音、そして海潮音に混ざったかすかな笑い聲が平安京に屆いた。
太陽在衆人的注視下化為了通體紅黑色的圓環,如同一枚在空中高懸的鎖孔一般。人世通過那小小的鎖孔聯通向了世界之外,虛無之海的潮聲撲面而來,潮聲之中摻雜着若有若無的笑聲。
【神堕ロチ】
「計畫通りでないことも多々あるが、やはり來てくれたか。あの方を世界の內側に降臨させる方法を見つけるために、私は様々な方法を試した。だから「この世界」は「特別なもの」になった。」
看來雖然計劃實施時多少有了些變化,她終于還是來了。為了讓她能夠找到回歸世界內部的方法,我可是在這世界中做了許多的嘗試,才使得「這一個世界」能夠變得如此「與衆不同」。
【須佐之男】
「お前が人間界で幾度も人々を惑わして戦亂を引き起こし、審判儀式を執り行い陰陽の均衡を亂したのは、この時のためか。」
你在人世反複煽動戰亂,發動審判儀式,崩壞陰陽的平衡,就是為今天做準備嗎?
【神堕ロチ】
「均衡が保たれた世界は、あの方が降臨するのに相応しくない。今のような亂世は罪が蔓延り、どこもかしこも屍山血河と化している。そして人々は、あろうことか、度重なる滅びや災いに慣れ、何も感じなくなったどころか、それを受け入れ、「あの方」が神であることも受け入れた。しかし殘念なことに、舞臺は整っても、あの方を召喚するのに必要な器は中々手に入らなかった。もともと器として悪神を使う計畫だったが、お前たちに計畫を邪魔された。だから天照をあの方の器にしようとしたが、それも葉わなかった。ならば、私が力ずくでこの世界と虛無の海を繋ぎ、この身をもってあの方を召喚する鍵になるしかない——」
一個平衡的世界,是無法迎接她的降臨的。如今的亂世罪惡橫行,屍骸遍野。而人們,竟然也習慣了這一次又一次的毀滅和災難,開始變得麻木,接受它為常态,也接受「她」為神明。只可惜,世界的舞臺已經準備就緒,用來召喚她的容器卻不易得。我原本準備用惡神作為迎接她的容器,可惜被你們破壞了計劃,于是轉而侵蝕天照,想将天照作為召喚她的軀殼,卻也未能如願。既然如此,我就只好用自己來強行打通這個世界與虛無之海,親自成為召喚她的鑰匙——
【晴明】
「邪神ともあろうものが、正體を現し、深手を負ってまでそうするのか。」
身為邪神的你,為此甚至不惜自爆真身,元氣大傷嗎。
【神堕ロチ】
「しかし晴明、お前たちは悪神を封印した。それはあの方にとっても、一つの封印に當たる。」
不過,畢竟晴明你們封印了惡神,這對她而言同樣也是一道封印呢。
【晴明】
「あの方というのは……」
你口中的她……
がらんとした空洞から潮水が溢れ出し、瘴気が漂い漏れる。ほとばしる神力は真っ黒な色をしているが、同時に僅かな輝きを放っている。星々を呑み込んだ泥水のような深淵は、過去に滅びた全ての世界の輝きに包まれている。
潮水從空洞中緩緩流出,瘴氣撲面而來,那噴湧而出的神力既黑暗卻又閃爍着若有若無的光芒,仿佛是吞食過群星的一灘泥水,深不見底的它仍披着所有死去世界的餘光。
【神堕ロチ】
「あの方は、この世で最も素晴らしい女神だ。」
她是這世間,最完美的女神。
空洞の中に出現した目が詰め寄ってきて、やがてその穴を完全に塞いだ。巨大で不気味な目は、獲物を見つめる貓のように餘裕綽々で、興味津々といった様子で世界を見下ろしている。
一只眼出現在了孔中,不斷靠近,最終将其徹底覆蓋,巨大而詭谲的它俯瞰着整個世界,仿若注視着池中獵物的貓一般,惬意而又興趣盎然。
【天照】
「ついに現れましたか、何千年も前からずっとこの時を待っていました。伊邪那美。」
你終于來了,我等這一天已等了千萬年之久。伊邪那美。
【伊邪那美】
「これが狹い穴を通して法螺貝の正體を覗く、組み合わされた鏡で萬華鏡を覗く人間の快楽か?何萬年も虛無の海で過ごし、數多の世界を滅ぼした私は、今になって初めてまもなく滅びる世界がどれだけ美しいものかを知った。道理でヤマタノロチが道楽に耽るわけだ。私は今日とても気分がいい、あなたたちに神の感謝を授けよう。もうすぐ、私は自らこの世界に降臨し、世界が滅びる最高の一時を見屆ける。この世界は特別に、私が直々に滅ぼしてやろう。私を讚え、愛しなさい。そうすれば情けをかけてあげよう。私の指先で、永遠の安息に溺れるがいい。」
這就是人類從孔洞中窺探海螺的身體,從棱鏡之間,窺測萬花筒的樂趣嗎?我居于虛無之海千萬年,毀滅的世界無數,今日才看清即将毀滅時的世界內究竟是怎樣的勝景,也難怪八岐大蛇,會對此流連忘返。今日的我如此歡欣,讓我來賜予你們神的謝禮。不久之後,我會親自降臨在這個世界,親眼目睹它死去的至高時刻。我将賦予這世界,被我親手毀滅的榮耀。贊美我吧,愛戴我吧,我的慈悲即将降臨,我的指尖,将許你們永恒的安息。
【天照】
「萬物は形作られた時から、滅びる運命にあります。生を授けられた萬物は、やがて死ぬ日を迎えます。滅びと死は罪ではなく、命の一部なのです。虛無の海に禦座すあなたも、また創世の神であることには変わりません。しかし今、私の民はあなたがもたらす災いに苦しみもだえ、私の目覚めを祈っていました。そして私は人々の祈りに応え、こうしてあなたの前に現れました。闇の女神よ、この場にて、光の女神天照が判決を下します——この世に降臨するなら、人の世に踏み入れた瞬間に、あなたは罪人に、衆生の敵に、神々の恥になるでしょう。その時、私は必ず——あなたに審判を下します。」
萬物有形,自有毀滅之時,萬物生息,自有死亡之日。毀滅與死亡并非是罪惡,而是生命的一部分,久居虛無之海的你,亦是創世之神。然而今日,我的子民因你而陷入災難,因你而苦痛萬分,因你而祈求我的蘇醒。而我回應了他們的祈願,來到了你的面前。黑暗之女神啊,在此,光明之女神天照宣判——倘若你降臨于世,在踏入人世的那一瞬,你便會化為罪人,成為衆生之敵,衆神之恥。屆時,我定會——将你審判。
——夜、晴明たちは庭院に戻った
——夜晚,晴明等人回到了庭院之中
滅びの女神が現れたあと、陰陽師たちは再び都で結界を設置し始めた。天照と荒は一旦高天原に戻ったが、須佐之男と高天原の神軍は人々を守るために現世に駐在している。一方、ヤマタノロチは拘束され、牢に収容された。鬼王たちはそれぞれの領地に戻り、まもなく現れる滅びの女神との戦いに備えている。
在毀滅女神現世後,陰陽師們在京都重新布置結界,天照與荒暫時返回高天原,須佐之男和高天原神軍駐留人世支援,八岐大蛇也被看押起來。各地的鬼王們返回領地,準備面對即将到來的毀滅女神。
【孔雀明王】
「晴明様、私も帰って孔雀の國の霊脈を修復しなければ。修復が済み次第、できるだけ早く戻ってきて、災難に立ち向かうあなたを手伝うわ。」
晴明大人,孔雀國尚還需要我歸去恢複靈脈,待事成後,我會盡快歸來,協助你一同對抗危機。
【晴明】
「今回天照様を呼び覚ますのに協力してくれて、感謝している。姉上の件については、本當に殘念だ。」
這次你能協助我們喚醒天照大人,已是非常感謝。對于你姐姐一事,我感到惋惜,希望你能節哀順便。
【孔雀明王】
「姉様は……取り戻せなかったけれど、これでいいのかもしれない。姉様が殘した白い羽根を持ち帰って、民には白の女王は悪神を討ち、冠婚葬祭までも神に支配されていた孔雀の國は過去に葬り去ったと伝える。もちろん、帰る前に、一つだけあなたの願いを葉えてあげる。私にできることなら、なんでも。」
雖然…沒能帶回姐姐,但這或許已是最好的結局。我會将姐姐留下的白羽帶回,告訴國民,是白女王殺死了惡神,終結了孔雀國的神婚獻祭。當然,在回去之前,我還能實現你一個願望,只要我能給的,必不會食言。
【晴明】
「この前の賭けのことか?気にしないでくれ、あれはもともと私の務めだ。」
你指之前的賭約?不必放在心上,那本就是我該做的。
【孔雀明王】
「……邪心の火を見つけて、呼び覚ましてくれてありがとう。無意識に優しさを差し出すあなたは、本當に魅力的ね。でも、晴明様、一つ告白したいことがあるの。」
……感謝你為我找到心邪之火,将我喚醒。你那不自覺流露出的溫柔,真是令人欲罷不能呢。不過,晴明大人,有件事我一直想向你坦白。
【晴明】
「告白?」
何事?
【孔雀明王】
「あなたが寝ている間に、私もあなたの記憶に入った。」
在你昏睡的時候,我也曾進入過你的記憶。
【晴明】
「何か見たのか?」
你看到了些什麽?
【孔雀明王】
「秘密!」
秘密~
【晴明】
「……!」
【孔雀明王】
「あまり力になれないけれど、この青い羽根には精神を安定させる効果があるから、身につけていて。もうなくさないでね。私は信じてる。しばしの別れは、素敵な再會のためにあるって。あなたのために祈るわ、私のお化けさん。」
雖然暫時無法幫上更多忙,但這枚青羽擁有辟邪安神的祝福,請你随身攜帶,別再遺失了。我相信,暫時的分別,是為了有朝一日能更好的相聚。我會為你祈禱,我的妖怪先生。
【晴明】
「ありがとう、青。」
謝謝你,青。